研究課題/領域番号 |
26890002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大城 朝一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40311568)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 異種感覚統合の神経基盤 / 神経活動の振動現象 |
研究実績の概要 |
本研究課題は異種感覚統合(Multisensory integration)の神経活動相関をラットの大脳内で見出すことを目的としている。初年度である平成26年度では実験のプロトコールを確立するためにまず麻酔下でラットを固定し、光刺激及び触刺激からなる異種感覚刺激を与えて、大脳皮質から神経活動を記録することを試みた。小動物用人工呼吸装置を導入し、麻酔の深度や種類を体系的に変えることでラット大脳から長時間に渡って安定して電気生理学的記録ができる麻酔条件を確立した。さらにビス型電極を用いた電気生理学的記録を開始した。初年度はその取り扱いの習熟、実験技術の向上に大きく時間を割いた。このビス型電極は最終年度(平成27年)に予定している覚醒条件下での電気生理学的記録に必須な技術である。さらに光遺伝学的手法でチャネルロドプシン遺伝子組み換えラットの触刺激器官(ヒゲの毛根細胞)を刺激することに成功し、その刺激プロトコールも確立することができた。 さらに電気生理学的記録だけでなく、光学的にも大脳の神経活動を記録できるように蛍光顕微鏡によるイメージング技術の導入も行った。その研究過程で大脳表面に渡って0.1Hz以下の非常に低速な神経活動の振動現象を新たに見出した。その現象を再現性良く観察できる条件やその性質(血中酸素飽和度に強く依存するが麻酔薬の種類にはほどんど左右されない等)についても徐々に明らかになりつつある。本研究のもうひとつの目的である神経系の振動現象と異種感覚統合現象の関連の解明に関して突破口的な発見のひとつになると期待される。最終年度(平成27年度)では、今回の研究で確立した実験プロトコールを基にして、覚醒下での電気生理学的記録とイメージングを行い、能動的な要因が異種感覚統合に与える役割をさらに追求していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気生理学的研究のセットアップについてはほぼ完了している。しかし麻酔と刺激提示のプロトコールの確立がようやく完了した段階であり、最終目的の一つである大脳のRL領域からの安定な単一神経活動記録にはまだ至っていない。麻酔と刺激提示、両方がベストな条件で初めて可能となると考えられるのでさらなる技術の向上、実験条件設定の改善等が必要とされる。
parvalbumin-、somatostain-positive抑制細胞を機能喪失させた変異体マウスは大変貴重なため、野生型の動物を使った実験プロトコールの確立が十分済んでから実験を開始する必要がある。そのためまだそれら変異体を用いた実験はスタートすることが出来ていない。神経活動記録に使用する多点電極も大変高価であるため、練習を積んだうえでの使用となる。安定して記録がとれるようになるにはもう少し時間が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
大脳からの神経活動記録はまず麻酔下の動物を用いて練習を積み、十分手技を高めてから最終目標である覚醒下の記録に挑戦する。現在のところ、麻酔下の実験はおおむね順調に進んでいる。自信がついたところで覚醒下の記録を開始したい。
視覚と触覚の統合領域であるRL領域からの神経活動記録を目指すが、視覚と聴覚の統合領域である上丘などの皮質下の構造からも記録をとることを試みる。
局所的な神経活動しか観察できない電気生理学的手法だけでなく、広い領域の活動を同時記録することのできるイメージング技術も取り入れ、異種感覚統合の神経基盤に関わる脳領域を同定、解析していきたい。
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