本研究の対象種であるアカウミガメは、国際自然保護連合が絶滅危惧種に指定している希少種である。北太平洋に棲息するアカウミガメは、南太平洋の個体群とは独立しており、日本列島が北太平洋唯一の産卵地である。海浜で孵化した幼体は黒潮・黒潮続流などの海流に乗り受動的に拡散し、カルフォルニア浅海域に加入、成長の後、産卵のために再び日本へ回帰すると考えられている。産卵後のアカウミガメの生活史タイプには東シナ海で採餌を行う浅海型と西部北太平洋で採餌を行う外洋型の2タイプあることが知られているが、これらの知見は、屋久島以北の産卵個体群の研究結果によってもたらされたものであり、奄美以南の個体群の生態的・遺伝的特徴についてはほとんど明らかにされていない。本研究では、衛星対応型発信機による行動追跡、安定同位体解析、遺伝子解析を用いた包括的アプローチにより、奄美以南のアカウミガメ産卵個体群の生態的・遺伝的特徴を明らかにすることを目的とした。それらの情報と先行研究の知見に基づき、北太平洋におけるアカウミガメ個体群の適切な保全管理単位の提言を行なう。 スタート支援研究費を受給した時点で、本年度のアカウミガメの産卵シーズンが終了していたため、本年度は次年度のための調査打ち合わせ、および調査・分析に用いる測器、備品の購入を行った。本研究は次年度より若手研究Aとして、規模を拡大して実施予定である。
|