研究課題
本研究ではヒト膵癌細胞株PANC-1より樹立した低血清耐性株PANC-1/Stv、低酸素耐性株PANC-1/Hypのシャペロン結合分子を解析することで、薬剤自然耐性に関与する分子を同定する。平成26年度は主に①PANC-1/StvおよびPANC-1/Hyp株のゲムシタビン感受性の評価および分子生物学的特性の解明、②PANC-1/StvおよびPANC-1/Hyp株に特異的なHsp72結合タンパク質の同定、③mCherry安定発現株の樹立を行った。1. MTTアッセイにより各株のゲムシタビンIC50値を算出した結果、PANC-1/StvおよびPANC-1/Hyp株の薬剤抵抗係数は親株であるPANC-1に比べ、それぞれ142倍と37倍に上昇していた。両株は通常培養(非ストレス)下であっても、小胞体ストレス応答を亢進させていることが明らかとなった。また、薬剤獲得耐性株であるPANC-1/GEMはゲムシタビンを不活化することで薬剤耐性を獲得していたのに対し、両株はアポトーシスを抑制することで薬剤耐性を獲得していることが示唆された。さらに、PANC-1/Stv株のみEMT様の形質転換が認められ、これらの形質がPANC-1/Hyp株を上回る薬剤耐性に関与していることが示唆された。2. 親株のHsp72結合タンパク質プロファイルとの比較により、PANC-1/StvおよびPANC-1/Hyp株に共通するHsp72結合タンパク質を質量分析計にて同定した。合計205タンパク質を同定し、37タンパク質が両株に共通かつ特異的であった。3. PANC-1、PANC-1/Stv、およびPANC-1/Hyp株のmCherry発現株を樹立した。細胞イメージングシステムにより十分な蛍光量であることを確認している。
2: おおむね順調に進展している
mCherry発現株の移植実験については遅れているが、樹立細胞株のゲムシタビン耐性機序解明や自然耐性関連分子のスクリーニングについては当初の計画以上の結果を得た。
ゲムシタビン自然耐性に関与する分子として37タンパク質を同定したが、さらなる解析により6タンパク質まで絞り込んだ。候補分子が少ないこと、また本学にin vivoイメージング装置が導入されたことから、イメージングに用いる動物をゼブラフィッシュからマウスに変更して、薬剤自然耐性関連分子を同定する。評価項目はゼブラフィッシュにて計画していた内容と変更はない。
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