近年、定常時において常在性腸内細菌がCD4ヘルパーT細胞の分化やIgA産生を調節することで、腸管での免疫応答を厳密に制御している。この腸内細菌による宿主免疫応答の調節は腸管局所に限らず、中枢神経組織、肺、関節、膵臓などの炎症応答にも影響を与え、ウィルス感染、アレルギー、臓器特異的自己免疫疾患の発症にも深く関与していることが分かってきた。本研究は、光遺伝学的手法を用いた細胞追跡法を確立することで腸管由来T細胞が他の組織へ移動する過程を可視化し、腸管外で起こる炎症応答にこれらT細胞がどのように関与するのかを明らかにすることで新たな炎症性疾患の制御機構を解明することを目的としている。平成26年度は腸管T細胞の動態解析を可能とするために、光照射依存的にCreリコンビナーゼの発現を誘導できるマウス(オプトジェネティクスCre;Opt-Creマウス)を樹立した。まず、ROSA26遺伝子領域にOpt-Cre-GFP配列をノックインできるターゲティングベクターを作成した。このベクターを用いてES細胞培養法により相同組換え体を獲得後、キメラマウスを作製することでOpt-Creマウスを樹立することに成功した。さらに、フローサイトメトリーによる解析によりターゲットされた細胞でGFPが発現していることを確認した。現在、このマウスとCre依存的に赤色蛍光タンパク質が発現誘導されるマウスと交配中であり、今後、このOpt-Creシステムを利用することで腸管由来T細胞の動態解析と自己免疫疾患発症への役割について解析していく予定である。
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