研究課題/領域番号 |
26891006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋田 佳恵 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任研究員 (80737122)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 植物 / 細胞・組織 / 発生・分化 / 気孔 |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者らが確立したスクロース水浸処理による気孔クラスター誘導法を利用し、植物組織における分化細胞のパターン形成に対する理解を深めることを目的としている。平成26年度はシロイヌナズナの子葉を用いて、スクロース水浸処理により気孔クラスターが形成される機構の解明を目的とした。まず、スクロース水浸処理による気孔分布異常がTMM依存的なシグナル伝達経路と独立か否かを明らかにするため、tmm変異体に対するスクロース水浸処理を計画し、材料となるtmm変異体を選抜した。さらに申請時には計画していなかったが、気孔のクラスター化が報告されている気孔分布関連因子epf1およびepf2変異体、さらにカロース合成酵素gsl8変異体についても選抜を行っており、既知の気孔分布制御機構との関連をより詳細に調べる準備をしている。 上記の変異体選抜には栽培期間が必要となるため、平成27年度に予定していた、気孔のクラスター化による葉組織学的影響の解析を前倒しして着手した。すでに光学顕微鏡用切片を17枚作製し、オールインワン顕微鏡により撮像している。来年度、取得画像について解析を行う予定である。
これまでに、スクロース水浸処理により誘導される気孔クラスターを形成している孔辺細胞について、細胞形状および気孔系譜細胞に特異的なエンハンサートラップラインの発現から、孔辺細胞の特徴を有していることを明らかにした。本研究ではさらに細胞内構造レベルでも孔辺細胞特有の構造が存在するか確かめるため、微小管に着目した。蛍光タンパク質による可視化の結果、気孔クラスターを形成する孔辺細胞においても、孔辺細胞特有の放射状に配向した微小管が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
tmm変異体の選抜に時間を要したが、気孔のクラスター化が報告されている他の変異体も同時に選抜したことで、より詳細に既知の気孔分布制御機構と比較できると期待される。また変異体選抜の期間中に、来年度計画していた気孔のクラスター化による葉組織学的影響について解析を進めているため、本研究全体の進捗としては順調であるといえる。 また、スクロース水浸処理により誘導される気孔クラスターを形成している孔辺細胞について、微小管だけではなく細胞壁および葉緑体の観察結果も得ており、これらの内容の一部を筆頭著者として論文を執筆中である。以上から、本研究は当初の計画以上に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度選抜したtmm変異体および選抜中のepf1、epf2、gsl8変異体に対してスクロース水浸処理を行い、気孔のクラスター化が亢進されるか確認する。またすでに作製、撮像した光学顕微鏡用切片に関して画像解析することで、気孔のクラスター化が葉組織に及ぼす影響を明らかにする。
さらに気孔の重要な役割のひとつである開閉を行う能力を、クラスター化した気孔も有しているか検討する。気孔開閉能の評価には、従来用いられている気孔開度の測定に加え、気孔開閉に応じて局在を変化させることが報告されている複数の細胞内構造を指標とする予定である。 本研究により、スクロース水浸処理により誘導される気孔クラスターについて、形成機構および生理学的影響を解明することが期待される。
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