石西礁湖および周辺海域で実施されてきた環境省モニタリングサイト1000では、2013年度現在計202地点でサンゴサンゴ群集の構造(サンゴ被度やサンゴ生育型、新規加入量など)や撹乱要因(サンゴ白化率、オニヒトデ出現個体数、病気の有無、台風被害など)が調べられている。広域でのサンゴ群集動態を明らかにするために、本研究課題では1998年~2013年のデータを解析の対象とした。 昨年度行ったサンゴ被度の年変化のクラスター解析により、石西礁湖および周辺海域のサンゴ被度は(1)高被度グループ、(2) 2007年減少グループ、(3)低被度グループの3つに分けられることが分かった。今年度はその結果をより詳細に解析し、類別された各グループのサンゴ被度の平均的なふるまいと、ミドリイシの新規加入数、オニヒトデ個体数、サンゴ白化率、および2003年にのみ観測された透視度との関係性を検討した。 2007年のサンゴ白化以降サンゴ平均被度が回復していないグループ2では、サンゴの回復力が失われていると考えられる。その地点は石西礁湖の中南部、東部、および石垣島北部に多く位置しており、全観測地点の約40%を占めた。サンゴ平均被度が回復しない要因は、2008年から2011年に中程度のオニヒトデ大発生があったためと考えられる。また、同時期に成長が早く被度の増加をもたらすミドリイシの新規加入数が少なかったことも、要因の一つだと思われる。一方で、高被度グループ1でも2011年にオニヒトデが大発生して被度が減少した地点があったが、これらの地点ではミドリイシの新規加入数が多いため速やかにサンゴ平均被度が回復すると期待できる。また、低被度グループ3の地点では透視度が低い傾向があり、ミドリイシの新規加入が妨げられる、もしくは成長が進まない環境下にあることが示唆された。以上の結果をまとめて国際学術誌に投稿した。
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