研究課題/領域番号 |
26891008
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
安村 友紀 お茶の水女子大学, 理学部, 研究員 (20733893)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 植物 / 進化 / 植物ホルモン / シグナル伝達 / 環境ストレス応答 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
陸上植物は、乾燥や水害などの環境ストレスに適応する耐性を持ち、その環境ストレス応答の多くはエチレンにより制御される。そのエチレンのシグナル伝達系の重要な制御因子の一つがCTR1タンパクであるが、CTR1に類似するタンパク(CTR1L)も存在し、その機能や役割は知られていない。26年度の研究では、被子植物のシロイヌナズナにおいてCTR1とCTR1Lの機能を比較し、CTR1多重遺伝子族の機能分化が、いかに陸上植物の環境ストレス応答の機能の拡大・多様化を可能にしたかを検証する。 まず、CTR1とCTR1Lの発現パターンをqPCR解析により検証し、次のデータを得た。(1)CTR1とCTR1Lには発現量に差があり、CTR1の発現量がはるかに多い。(2)CTR1が植物のどの部位でも発現されていることに対し、CTR1Lは若い実生ではほとんど発現されていない。このことから、CTR1とCTR1Lが機能する部位や役割が異なることが示唆された。 さらにctr1-1、 ctr1l両変異株を比較したところ、どちらの変異株でもエチレン応答において異なる性質の異常が観察され、CTR1とCTR1Lそれぞれの機能についてのおおまかな知見も得られた。類似するタンパクは機能も類似するという一般的な傾向から外れた興味深い例として、価値のある結果が得られたと考える。 機能解析をさらに進めるための重要なツールとなるctr1/ctr1l二重変異株を作成した。この変異株を用いて、環境ストレス応答、エチレン・ABA伝達系におけるCTR1とCTR1Lの役割を分子レベルで詳細に検証する研究に着手している。 また、共同研究を行うハーバード研究室やラングデイル研究室(英国オクスフォード大学)を訪問し、実験試料の譲渡や今後の研究計画、投稿論文について有意義な意見交換をおこない、今後の協力体制に関して合意を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の実験計画のCTR1とCTR1Lの発現レベルの解析については計画通りに実行でき、有意義な結果をまとめることができた。 変異株を用いた機能解析については、ctr1/ctr1l二重変異株の作成に想定した以上の時間がかかったために計画より少々遅れた。これは、変異株の生育が野生型に比べて著しく遅い上に、種子の形成が悪く種子の回収率が低いという、実施するまで気付くことができなかった理由による。これにより二重変異株を用いた詳細な表現系解析が遅れたが、パイロット実験としてctr1-1、 ctr1l両変異株を用いて表現系解析を始め、事前に実験手法やコンディションなどを検証し確定することができた。これにより、二重変異株も含めた解析も速やかに開始することができ、すでに着手している。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の発現レベルの解析から得られた知見をもとに、CTR1とCTR1L両タンパクが機能する植物の部位や器官を予想することができる。この部位を中心に、さらに詳しい機能解析を進める。まず、作成した二重変異株やctr1-1、 ctr1l両変異株を用いて、ABAやエチレン、環境ストレス(乾燥、冠水、高浸透圧など)の影響下における生長の相違やストレス反応の有無について調べる。また、エチレンやABAによって発現が誘発される遺伝子群の発現パターンをも比較検証する。これによりABA応答やエチレン応答におけるCTR1とCTR1Lタンパクの機能分化について生理学的・分子学的なデータを得ることができる。 同時に、CTR1タンパクとCTR1Lタンパクはそれぞれキナーゼドメインを持つが、そのリン酸化機能の標的基質を同定し比較する実験を行う。このために、プロテオーム解析法を用いた網羅的な探索を試みるほか、イーストツーハイブリッド法を用いて標的の候補と考えられるタンパクとCTR1・CTR1L両タンパクとの相互作用の有無や度合いを調べる。 同様の実験を、ヒメツリガネゴケのCTR1Lタンパクについても行う。これらの実験によりCTR1・CTR1L遺伝子の機能分化や多様化に関する具体的なデータを得ることができ、また、同定された標的基質について調べることにより、 CTR1またはCTR1Lタンパクによるリン酸化がストレス応答においてどのような役割を持つのか予想をたてることができる。
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