研究課題/領域番号 |
26891017
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
竹田 哲也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30302368)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞質分裂 |
研究実績の概要 |
動物細胞の細胞質分裂は、アクチン収縮環の収縮力と、細胞膜リモデリングの協働によって進行する。ショウジョウバエのF-BARタンパク質Syndapinは、細胞質分裂における膜リモデリングに重要な機能を持つが、その時空間的な制御のしくみは明らかになっていない。Syndapinの膜結合性と膜変形活性はリン酸化による制御を受け、細胞質分裂においては脱リン酸化型のSyndapinが機能することが明らかになっている。そこで本研究では、Syndapinの脱リン酸化に関わるホスファターゼを同定し、細胞質分裂における膜リモデリングの時空間的な制御機構を明らかにすることを目的とした。 まずアフィニティー精製したSyndapin複合体をプロテオーム解析し、Syndapinの脱リン酸化に関わるホスファターゼの同定を試みた。しかし、このアプローチではシンダピンに相互作用するホスファターゼは同定することができなかった。そこで、ショウジョウバエゲノムに存在するホスファターゼのうち、特に細胞分裂期に重要な機能を持つホスファターゼについて、RNAiによる機能阻害実験を行い、Syndapinの局在に及ぼす影響を解析した。その結果、複数のホスファターゼのRNAiにより、Syndapinの細胞分裂面への局在が異常になることが明らかになった。 一方、Syndapinによる膜変形の作用機序を明らかにするために、in vitroの膜変形アッセイ系を用いて、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いたナノスケールでのイメージングを行うことを計画した。これまでに、膜変形活性をもつSyndapin(野生型とリン酸化変異体)を大腸菌において発現・精製した。さらにこれらの精製タンパク質とリポソームを使った、in vitroの膜変形アッセイ系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、1. 高速AFMによる膜ダイナミクス観察に適したin vitroアッセイ系の確立、および2. 高速AFMによるSyndapinのリン酸化による機能調節機構の解明、の2点を実施計画とした。上記のように、1に関してはほぼ達成できている。また2に関しては上記のアッセイ系を利用して金沢大学・安藤敏夫教授の研究室の協力のもと、実際に高速AFM観察を始めている。さらに、研究計画には含めなかったが、Syndapinのリン酸化制御に関わると考えられるホスファターゼの同定に成功した。これらの状況をふまえ、本研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.Syndapinのリン酸化制御に関わるホスファターゼの機能解析 Syndapinのリン酸化制御に関わると考えられるホスファターゼについて、その局在やダイナミクス、またRNAiを行った際のSyndapinの局在および細胞質分裂におよぼす影響を詳細に解析する。さらに、これらのホスファターゼと拮抗してはたらくキナーゼの同定を試みる。さらにSyndapinが同定したキナーゼとホスファターゼによってリン酸化制御される部位を特定し、そのリン酸化特異的抗体を作成して、Syndapinが細胞質分裂の際に時空間的にどのようにリン酸化制御を受けるのかを明らかにする。 2.高速AFMによるSyndapinのリン酸化による機能調節機構の解明 昨年度の研究において確立した高速AFM観察のin vitroアッセイ系において、Syndapinのリン酸化変異体や、キナーゼやホスファターゼを加えてリン酸化状態を変化させたSyndapinを用いて、Syndapinの構造変化とそれに伴う膜変形ダイナミクスへの影響を明らかにする。
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