哺乳類の目において、1-2%の網膜神経節細胞に青色光感受性の光受容タンパク質であるメラノプシンが発現しており、メラノプシン発現網膜神経節細胞と呼ばれる。メラノプシン発現網膜神経節細胞は自身で光を感じると共に桿体・錐体からの投射も受け、概日時計の位相調節や瞳孔の開閉などの非視覚応答を制御する。つまり、哺乳類の網膜においては桿体・錐体に加え、メラノプシン発現網膜神経節細胞が第三の光受容細胞として機能する。メラノプシンは桿体・錐体の光受容体とは異なり、無脊椎動物のオプシンに類似すると考えられている。視覚応答・非視覚応答を理解するために、メラノプシン発現網膜神経節細胞内で光情報がいかに制御されているのかを解明したい。本研究ではメラノプシンの性質を明らかにするためランダムミュータジェネシスおよび特定の領域を狙った変異体の作製を同時並行させた。哺乳類の培養細胞を暗黒条件下で維持し、メラノプシン変異体を細胞に発現させ、青色光の照射によるカルシウム濃度の変化、つまりメラノプシンの光応答をin vitroで測定した。数種類の光応答変異体を単離することに成功し、得られた変異体を組換えアデノ随伴ウィルスベクター用いてマウスの網膜神経節細胞に発現させて非視覚応答を測定し、in vivoで変異部位の意義を評価した。
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