研究実績の概要 |
近年、dsRNAなどの機能性RNAが細胞間を伝播し細胞非自律的に遺伝子の発現調節を担うことが知られるようになり、新しい細胞間情報伝達機構として注目されている。しかし、細胞外の機能性RNAが伝播する分子機序について十分な解明をみない。本研究では、線虫における細胞非自律的なRNAi(全身性RNAi)という現象に着目し、細胞外dsRNAの取り込みと放出過程における小胞輸送経路の分子実体と役割を明らかにし、細胞がdsRNAを取り込む分子機序を解明することを目的とした。全身性RNAiに関与する新規因子を同定するために、線虫C. elegansを用いて順遺伝学的なサプレッサースクリーニングを行い、全身性RNAiが効きにくい変異体(rsd変異体)における全身性RNAiの不全を抑圧する遺伝子変異体を取得してきた。GFPに対するdsRNAを摂食により線虫体内に導入し、rsd変異体の体壁筋におけるGFPの消光を指標に、約250,000ゲノムをスクリーニングし、全身性RNAiの不全を抑圧する変異体を複数単離した。遺伝子マッピングやトランスジェニックレスキュー実験を行う事で、そのうちの一つの原因遺伝子を同定した。同定した遺伝子は金属イオンを輸送すると考えられる溶質輸送体であり、最終年度は本輸送体の機能解析を中心に行い、本輸送体が小胞輸送の制御に関わる事を明らかとした。機能性RNAの伝播に関わる新規因子として溶質輸送体を同定し、本輸送体を介した小胞輸送がdsRNAの伝播に関わる事を、現在、論文として発表する準備を行っている。
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