本研究は、遺伝子発現の非対称パターン形成がNodal-Leftyのみで可能なのか、そのパターンの大きさや形に重要なパラメータは何なのかという疑問に取り組むものである。 前年度の段階で、人工Nodal-Lefty系を導入した細胞で、低濃度Nodal添加条件下で小さな高Nodal発現領域の自律的な形成を確認していた。それをふまえて前年度の研究計画では、(5)各構成要素のパラメータの確認と並行してNodal-Lefty系のパラメータを操作できるような仕組みを作る予定であった。 (5)に関しては、Nodal応答プロモーターのシグナル応答曲線を得た。さらにこの応答曲線を使ったシミュレーションにおいて、私たちの作製した人工Nodal-Lefty系が非対称パターン(Turingパターン)を形成しうることが分かった。一方、拡散係数については二次元培養下において細胞外GFP融合Nodalを見ることが困難であったため、Nodal応答リポーターを介してNodalの拡散を見る方針に変更したところである。 (6)のNodal-Lefty系の再構成に関しては、より大きな高/低Nodal発現領域の自律的な形成に向けて、Nodal高発現クローン取得のための仕組みづくりをまず行った。その結果、Nodal非添加条件下でNodalの自己活性化を起こせるクローンを取得できた。このクローンを元に人工Nodal-Lefty系を作り直したところ、Nodalが多く発現しているため、Lefty2による抑制の力が足りないことが分かった。また一方で、HEK293細胞ではLefty2はほとんど未成熟型だったが、Furinを発現させると成熟型Lefty2が現れることを確認した。したがって今後は、人工Nodal-Lefty系にFurinを導入することででLefty2による抑制を強めたうえでパターン形成を観察する予定である.
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