縄文時代人は現在の日本列島人の基層集団であることから、日本列島人の起源と成立の過程を明らかにするうえで重要な集団である。縄文時代は1万年以上の長期に渡り、これまで複数の縄文人骨の古代核ゲノム分析をしているが、縄文前期を中心とした4000年間の遺伝情報が欠落していた。 1.縄文前期人骨のミトコンドリアゲノム分析:本年度も昨年と同様にミトコンドリアゲノム分析をはじめに行い、核ゲノム分析に最適な試料の選定を試みた。当初予定していた小竹貝塚の人骨からは、現段階で核ゲノムに適した試料を選定できていないので、同じく縄文時代前期に該当する北海道から関東の遺跡の人骨4点のミトコンドリアゲノム分析を行った。その結果、縄文前期の人骨3点から、ミトコンドリアゲノム配列を得ることができ、そのうち2点は古代人由来のDNAを他の試料よりも豊富に含んでいることが確認されたことから、核ゲノム分析に適していると判断した。また、このミトコンドリアゲノム分析より、ミトコンドリアハプログループのより詳細な分析ができ、縄文時代を通したヒトの遺伝的連続性と、北海道から関東までの縄文人集団に遺伝的な地域差が存在した可能性が示された。 2.縄文中期~晩期のミトコンドリアゲノム分析:縄文前期人骨に加えて、遺伝情報の欠落を埋めるために、縄文中期~晩期のミトコンドリアゲノム分析も並行して行った。現在までに10個体以上からミトコンドリアゲノム配列を決定することに成功しており、縄文前期人骨と比べてDNAの保存状態が良いことが示唆された。DNAの残存状態も縄文前期人骨と比べて良好であったことから、縄文中期人骨5点を選出し、その核ゲノム分析を試みた。 3.核ゲノム分析:核ゲノム分析用のDNAライブラリを7つ作成し、MiSeqおよびHiSeqでのシーケンスを行った。その結果、合計して縄文人核ゲノムの数%~数十%に相当するゲノム配列を得ることに成功した。
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