ノリの養殖産業の中で最も代表的な品種はスサビノリであり、わが国の水産物の中でも重要な地位を占めている。しかし、近年は、有明海の養殖海苔の白化問題や陸上作物同様の菌類の寄生による病害などが多発し、生産高の約20%に相当する200億円もの損害が出ることもある。そのため、ノリの生産を安定させ、かつ高品質・高収量そして耐病性などの株の品種改良に向けて、ノリ独自の育種技術が必要である。 本研究では、スサビノリの形質転換技術を活用し、ノリ品種改良に資する分子生物学的手法を用いた新規育種基盤技術の研究開発を目的としている。 本年度は、スサビノリ固有の転写調節領域(プロモーター領域)とスサビノリ特有のアミノ酸配列(コドン使用頻度に従った配列)に改変したレポーター遺伝子や選択マーカーを用いて外来遺伝子導入方法により、スサビノリの一過的遺伝子発現を確認するととともに、形質転換体の作出を試みた。具体的には、上記の形質転換技術を利用し、組織化学的検出が可能な遺伝子や蛍光タンパク質遺伝子を持つ、複数のスサビノリ形質転換体候補の作出を試みた。
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