最終年度(二年目)に当たる2015年度では、本研究課題とした福島県における地域内食料産業連関の実態とその再構築に向けた方向性を明らかにするため、初年度からの現地調査(フードシステム関係主体への聞き取り調査)を継続しながら、並行してデータのとりまとめを行い、その成果を3つの論文として公表した。1つ目として、初年度で実施した「ふくしま大豆の会」の調査・分析の内容をさらに深め、食農連携の継続・発展のあり方を示す「食と農で地域をつなぐ」枠組みを提起した。その中身について日本協同組合学会の大会シンポジウムで「食と農で地域をつなぐ協同のあり方―真の地産地消と6次産業化を問う―」というタイトルで報告し、学会誌『協同組合研究』に報告論文として掲載された。2つ目として、地産地消のシンボルと位置づけられる学校給食の食材流通に着目し、福島県内の関係主体への聞き取り調査を実施した。調査・分析の成果はJC総研機関誌『にじ』に「福島県が抱える風評問題と地産地消を取り戻す意義―流通からのアプローチ―」というタイトルの論文として発表した。そして3つ目として、一過性のブームやイベントに終わらない継続・発展的な食農連携のあり方への別のアプローチとして、著者が以前から取り組んできたウメ・梅干し産地の研究成果を再整理しながら本研究課題に照らして考察を試みた。その内容を専門誌『農業と経済』に「農商工連携からクラスター形成へ―ウメ産地から考える―」というタイトルの論文として発表した。さらに研究成果を社会・現場に早く還元するため、アウトリーチ活動として上記の3論文に基づく講演会やセミナーを積極的に開催した。
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