研究課題/領域番号 |
26892006
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
王 寧 筑波大学, 生命環境系, 助教 (90730193)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 日持ち性 / トマト / 転写後制御 / エチレン / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者はトマトの重要形質である果実の日持ち性の遺伝子制御機構を解明し、ポストバーベスト管理に適した品種の開発するによって安定した食料供給を目指す。エチレン生合成関連遺伝子は日持ち性にかかわる重要な因子として知られ、果実成熟が抑制されたトマト変異系統NORの遺伝子機能を解析し、miRNAによるNOR転写後調節機構の有無を検証する。更に、先行研究においてトマトのモデル品種マイクロトムの大規模変異集団から選抜されたNOR変異系統を用い、NORと他のエチレン生合成関連遺伝子との交互作用について解析する。本年度は、以下の結果が得られた。 果実成熟制御因子NORの遺伝子発現解析を行った。トマトデル品種マイクロトム果実の各成長段階(花、未熟果実、緑熟期、催色期、桃熟期、完熟期)のサンプルを用いてQ-PCRした結果NORの発現レベルは催色期に最大値に達することが分かった。更に、野生品種におけるエチレン合成量、色、果肉かたさの変化を測定した。更に、他のエチレン生合成関連遺伝子への影響を調べるためにTILLING技術用いて選抜されたNOR変異系統の成長は顕著に遅れ、赤熟にならない変異系統を用いて解析する。そのためにNOR変異体の遺伝子ホモ化及び世代促進を進めた。 miRNAによるNORの転写後制御機構の有無について探索した。本年度はIn silicoでのmiRNA候補及び、NOR領域における標的部位の推定を行た。公共データベースのsmall RNAリードを解析した結果、想定した配列を持つsiRNAのリード数は少なく、NORの転写領域にマッピングされなかったが、プロモーター領域にsiRNAと交互作用する可能性がある。 NORの形質転換体の作成による遺伝子機能解析を行った。35Sプロモーターで誘導するNOR過剰発現系統及び、CRES-T法とRNAi法による発現抑制形質転換体の作成するためのベクターを構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は3つの子課題に取り組み、それぞれ以下の進捗状況であったことから、上記の判断を行った。 1.日持ち性制御遺伝子NORの発現解析:野生株におけるNORの発現解析し、発現パタンを確認できた。他のエチレン生合成関連遺伝子の情報を集め、nor欠損変異体を用いた遺伝子発現解析を準備した。 2.NORに制御するmiRNA候補の探索:In silicoでのmiRNA候補及び、NOR領域における標的部位の推定を行った。想定した配列を持つmiRNA稀であり、予想したターゲットサイトに相補的な配列はあまりかった。しかし、新たにNORのプロモーター領域にsiRNAと交互作用する可能性がある4か所発見した。 3.NORの形質転換体の作成:形質転換体作成に必要なベクターが構築できた。アグロバクテリウムに感染による形質転換体作成は予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
トマト果実の日持ち性を制御する転写因子NORの発現解析をし続け、特にnor欠損変異体を用いて他の遺伝子への発現制御関係を明らかにする。また、トマト果実内のNOR発現に対する局在性解析を行い、受粉効率や、角質形成への影響について検討し、NORの追熟過程における機能を明らかにする。 今年度中にNORノックダウン変異系統を用いて遺伝子発現解析を行う。先行研究にトマトのモデル品種マイクロトムのTILLING技術を用いたNOR変異系統を選抜した結果、終止コドンを生じ、赤熟にならない系統を発見した。この変異系統を利用してエチレン生合成関連遺伝子の発現パタンを確認し、野生株との違いを検証する。 miRNAによるNOR遺伝子の転写後制御の有無を引き続き検討する。前年度にin slicoスクリーニング行ったが、NORの転写領域にマッピングず、候補miRNA配列と相同性高いリードは僅かしかなかった。今年度中にModified 5'RACE法を用いてmiRNAによるNOR mRNA切断を検証する。更に、野生株に乾燥ストレスを与えてNOR mRNA切断の有無を検証する。二年間のデータ解析から総合的にmiRNAの関与を判断する。 NORの形質転換体の作成による遺伝子機能解析を行う。今年度中に引き続き形質転換体の作成と世代促進を行う。CRES-T法とRNAi法による発現抑制形質転換体の表現型とTILLING法で選抜された変異系統の表現型を比べることでNORの機能を明らかにする。特に、NOR発現量が比較的に高い果実の追熟期における機能を検討する。
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