研究課題
近年、乳酸菌を用いたドラッグデリバリーシステムや、乳酸菌を抗原運搬体として用いる粘膜ワクチンの研究が盛んに行われている。本研究は、乳酸菌組換えワクチン構築のための基盤研究を行うとともに、胃内感染病原菌であるHelicobacter pylori(ピロリ菌)の感染を予防する経口ワクチンを開発することを最終目的としている。本年度は、まず研究遂行のために必要な生物資源、遺伝子資源を調達するとともに、各実験環境のセットアップを行い、以下の予備的実験を開始した。①宿主候補であるLactococcus lactis、および数種のLactobacillus属細菌に対し、nisin誘導型プロモーター下に設置したgfp遺伝子を導入し、宿主-発現系としての有効性を確認した。また、非選択圧条件下でのプラスミド保持試験を行い、L. lactis宿主株においては 10継代以上に渡っての安定的なプラスミド保持性が確認された。②宿主菌体の細胞表層への抗原提示を実現するため、L. lactis (MG1363 or IL1403)のゲノム上に存在し、細胞壁アンカーモチーフを持つタンパク質を数種クローニングした。現在、GFP融合タンパク質としての発現・局在確認を行っている。③宿主L. lactis株においてハウスキーピング遺伝子として発現するhtrA(菌体外プロテアーゼ)の外来タンパク質への影響を確認するため、L. lactis NZ9000 WT /ΔhtrAの両菌株にH. pylori由来の外膜タンパク(全長oipA)を導入し発現量の比較を行ったが、本タンパク質はいずれの宿主においても発現量が低く、量的比較には至らなかったため、他のピロリ菌タンパクを用いた再試験を行っている。
3: やや遅れている
研究費の交付開始が10月であり、必要な器材、消耗品等の購入がそれ以降可能となったため、実質的な研究期間が限られていた。そのため、当該年度に予定していたピロリワクチンの候補となる乳酸菌組換え体の獲得には至っていない。上記の実験を通して得られた知見をもとに、次年度は計画以上の成果を上げられるように努力したい。
今後は、当該年度に達成することができなかった研究項目に継続して取り組むとともに、以下の項目について検討する。①ピロリ抗原発現プラスミドの構築と、抗原局在性の異なる乳酸菌組換え体の獲得②ポリクローナル抗体を用いた、ピロリ抗原タンパクの発現・局在解析③ヒトCD4陽性T細胞を用いたin vitro免疫応答試験④ピロリ菌感染マウスモデルを用いた免疫付与試験
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件)
Human Pathology
巻: 46 ページ: 129-136
10.1016/j.humpath.2014.10.006.
Applied and Environmental Microbiology
巻: 80 ページ: 6647-6655
10.1128/AEM.02312-14.
PLoS One
巻: 9 ページ: 103506
10.1371/journal.pone.0103506.
Journal of Medical Microbiology
巻: 63 ページ: 1189-1196
10.1099/jmm.0.075275-0.
Journal of Antimicrobial Chemotherapy
巻: 69 ページ: 1796-1803
10.1093/jac/dku050.