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2014 年度 実績報告書

フェアリー化合物の生合成を司る新規プリン代謝経路の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26892013
研究機関静岡大学

研究代表者

崔 宰熏  静岡大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40731633)

研究期間 (年度) 2014-08-29 – 2016-03-31
キーワードFairy chemical / AHX / AOH / ICA / metabolite / biosynthesis
研究実績の概要

1. 活性物質の植物・菌類における内生の有無の確認
3大作物の一つであるトウモロコシ(ミルフィーユ,甘々娘)の可食部を80%エタノール及びアセトンで抽出し,抽出物を得た。これらの抽出物をHPLCで保持時間からAHX及びAOHが溶出すると考えられる部分を分取した。得られた画分をオービトラップ型質量分析装置により分析し,AHXを検出した。また,様々な菌類(キノコ)においても同様に抽出し,部分精製した後,オービトラップ型質量分析装置により分析した結果,AHXあるいはAOHが検出された。ICAの質量分析装置による定性方法を確立した。イネ(根)の抽出物の部分精製画分からICAで検出された。
2. 活性物質の代謝経路の解明
AHXとAOHの処理区では同じ代謝産物が産生されることが明らかになった。これらの処理区のイネの地上部からはAOHが検出された。一方,地下部からはAOHとそれ以外の物質が検出された。それらの代謝産物を各種クロマトグラフィに供し代謝産物1-3の単離に成功した。これらの化合物を質量分析やNMRで構造解析した結果,ともにAHXとAOHのグルコシドと決定した。ICAの植物体内における代謝経路に関する実験を行った。同様に,ICA処理イネにおける新たな代謝産物を探索した結果,3つの新規代謝産物を見出し,それらの化学構造を決定した
3. 活性物質の生合成経路の解明
AICAからAHX,さらにAOHへの生合成経路が存在するという仮説に基づき,イネから当該酵素の精製を試みた結果,AHXとAOHの生成酵素の部分精製に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.活性物質の植物・菌類における内生の有無の確認
AHX,AOHが植物だけではなくあらゆる生物に存在することを明らかにするため,キノコを抽出し部分精製した画分からAHX,AOHの検出に成功した。ICAのオービトラップ型質量分析装置による定性方法を確立した。イネの根の抽出物の部分精製画分からICAで検出されたことから,内部標準として[2,5-13C2]ICAを用いて定量方法を検討している。その他の予想生合成関連化合物(AICA, AHX, AOHなどのリボシド,リボチド)の検出方法を検討している。
2.活性物質の代謝経路の解明
AHX,AOH,ICAの植物体内におけるさらなる代謝産物の単離,精製を目的とし実験した。現在までに6つの代謝産物の構造を決定した。新たな代謝産物を探索している。
3.活性物質の生合成経路の解明
AHX化学合成の原料であるAICAからAHXへの生合成経路が植物や菌類などに存在するという仮説をもち,実験を行った結果、部分精製画分から生合成に関与する酵素が存在することが明らかになった。コムラサキシメジについては13C15N-Argを用いて培養して得たAHXとICAへのラベル体が取り込みを確認した。プリン塩基の生物共通の生合成では,6員環のカルボニル基は二酸化炭素由来であるとされている。しかし,今回の結果では,Argの炭素がカルボニル基に取込まれていた。この結果は再現性があり,プリン塩基の生物共通の生合成の常識を覆すことを意味する。

今後の研究の推進方策

1.活性物質の植物・菌類における内生の有無の確認
AHX,AOHとICAの検出方法は確立されたが,その他の予想生合成関連化合物(AICA, AHX, AOHなどのリボシド,リボチド)と単離された代謝産物の検出方法を検討が必要である。平成27年度中に,生合成関連化合物の質量分析装置による定性・定量方法を確立する。確立した後,様々な植物と菌類をエタノールおよびアセトンで抽出を行い,抽出物あるいはその抽出物をHPLCで部分精製した画分をオービトラップ型質量分析装置によりICAと生合成関連化合物の内生の有無を確認する。
2.活性物質の代謝経路の解明
活性物質をイネに取り込ませ,その代謝産物を精製し,NMR等の機器分析を使用して構造決定を行う。
3.活性物質の生合成経路の解明
経路を触媒する酵素 (AICA→AHX, AHX→AOH, AHX, AOH→配糖体) については部分精製まで成功している。しかし,完全精製には至っておらず当該遺伝子は未同定のままである。部分酵素精製まで成功しているため,平成27年度は目的酵素 (AICA→AHX, AHX→AOH, AHX, AOH→配糖体) の精製を目指す。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] イネにおけるフェアリーリング惹起物質の 生合成経路に関する化学的研究2015

    • 著者名/発表者名
      崔 宰熏
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-29
  • [学会発表] コムラサキシメジにおける植物成長調節物質の 生合成経路に関する化学的研究2015

    • 著者名/発表者名
      寺島 百合香、崔 宰熏
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-29
  • [学会発表] フェアリーリング惹起物質の代謝に関する 生物有機化学的研究2015

    • 著者名/発表者名
      澤田 梓、崔 宰熏
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-29
  • [学会発表] フェアリーリング惹起物質糖転移酵素の探索2015

    • 著者名/発表者名
      伊藤 里奈、崔 宰熏
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-29
  • [学会発表] フェアリーリング惹起物質の代謝産物に関する 生物有機化学的研究2015

    • 著者名/発表者名
      松﨑 信生、崔 宰熏
    • 学会等名
      日本農芸化学会
    • 発表場所
      岡山大学
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-29

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公開日: 2016-06-01  

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