現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.活性物質の植物・菌類における内生の有無の確認 AHX,AOHが植物だけではなくあらゆる生物に存在することを明らかにするため,キノコを抽出し部分精製した画分からAHX,AOHの検出に成功した。ICAのオービトラップ型質量分析装置による定性方法を確立した。イネの根の抽出物の部分精製画分からICAで検出されたことから,内部標準として[2,5-13C2]ICAを用いて定量方法を検討している。その他の予想生合成関連化合物(AICA, AHX, AOHなどのリボシド,リボチド)の検出方法を検討している。 2.活性物質の代謝経路の解明 AHX,AOH,ICAの植物体内におけるさらなる代謝産物の単離,精製を目的とし実験した。現在までに6つの代謝産物の構造を決定した。新たな代謝産物を探索している。 3.活性物質の生合成経路の解明 AHX化学合成の原料であるAICAからAHXへの生合成経路が植物や菌類などに存在するという仮説をもち,実験を行った結果、部分精製画分から生合成に関与する酵素が存在することが明らかになった。コムラサキシメジについては13C15N-Argを用いて培養して得たAHXとICAへのラベル体が取り込みを確認した。プリン塩基の生物共通の生合成では,6員環のカルボニル基は二酸化炭素由来であるとされている。しかし,今回の結果では,Argの炭素がカルボニル基に取込まれていた。この結果は再現性があり,プリン塩基の生物共通の生合成の常識を覆すことを意味する。
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今後の研究の推進方策 |
1.活性物質の植物・菌類における内生の有無の確認 AHX,AOHとICAの検出方法は確立されたが,その他の予想生合成関連化合物(AICA, AHX, AOHなどのリボシド,リボチド)と単離された代謝産物の検出方法を検討が必要である。平成27年度中に,生合成関連化合物の質量分析装置による定性・定量方法を確立する。確立した後,様々な植物と菌類をエタノールおよびアセトンで抽出を行い,抽出物あるいはその抽出物をHPLCで部分精製した画分をオービトラップ型質量分析装置によりICAと生合成関連化合物の内生の有無を確認する。 2.活性物質の代謝経路の解明 活性物質をイネに取り込ませ,その代謝産物を精製し,NMR等の機器分析を使用して構造決定を行う。 3.活性物質の生合成経路の解明 経路を触媒する酵素 (AICA→AHX, AHX→AOH, AHX, AOH→配糖体) については部分精製まで成功している。しかし,完全精製には至っておらず当該遺伝子は未同定のままである。部分酵素精製まで成功しているため,平成27年度は目的酵素 (AICA→AHX, AHX→AOH, AHX, AOH→配糖体) の精製を目指す。
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