コムギに感染するうどんこ病菌(コムギ菌)とカモジグサに感染するうどんこ病菌(カモジグサ菌)をいろいろな種類の栽培コムギと野生コムギの葉に接種し、感染の有無を調査した。ほとんどのコムギ系統において、コムギ菌とカモジグサ菌に対して感染を許さなかったが、一粒系コムギのTriticum urartuと野生コムギAegilops umbellulataでは、コムギ菌とカモジグサ菌に対する抵抗性と罹病性が分離した。これらの分離した系統を用いることで、コムギ菌とカモジグサ菌を交配したできたF1菌系の抵抗性と罹病性を評価することが可能になった。F1菌系のうち、宿主抵抗性に関与する非病原力エフェクター遺伝子を全て持たない菌系、1つもつ菌系、2つもつ菌系、3つもつ菌系に着目した。感染葉でこれらの菌系で発現している宿主特異性に関与する非病原力エフェクター遺伝子を同定するために、感染葉からRNAを抽出した。 抽出するにあたって、より多くのRNAが、宿主由来でなく、菌由来にするためにRNA抽出法を検討した。その結果、F1菌系をオオムギの裏表皮に感染させ、18時間から20時間後に裏表皮細胞を剥がし、その裏表皮細胞のみを使うことで菌由来のRNAの割合を高めることができた。抽出したRNAを用いてRNAシークエンシングを実施した。また、F1菌系を感染したコムギ葉からもRNAを抽出し、RNAシークエンシングをおこなった。F1菌系間の遺伝子発現量の比較解析を実施し、候補遺伝子を絞り込んだ。更に、コムギに感染するいもち病菌に候補遺伝子を形質転換し、形質転換いもち病菌を利用して非病原力エフェクター遺伝子であるかを評価する実験系を確立した。
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