研究実績の概要 |
本研究は、麹菌Aspergillus oryzaeにおいて初めて見出されたエンドサイトーシスに関連するAAA ATPase AipAを中心とした分子機構を明らかにし、真核微生物におけるAAA ATPaseの新たな機能を提案することを目的とした。 まずAipAとの相互作用因子を同定する目的で、in silico解析を行った。その結果、エンドサイトーシスで機能するAoLas17、エイソソーム構成因子のAoPil1とAipAが相互作用することが示唆された。実際に、酵母ツーハイブリッド解析により、AipAとAoPil1の相互作用が確認された。エイソソームは出芽酵母においてエンドサイトーシスと関連することから、AipAがエンドサイトーシスと関連して機能することが示唆された。 次にAopil1オルソログであるAspergillus nidulansのpilA破壊株がエルゴステロール生合成阻害剤のイトラコナゾールに耐性になるという知見を利用し、aipA破壊株の表現型解析を行った。その結果、aipA破壊株はイトラコナゾールに感受性になることがわかった。以前に、エンドサイトーシス関連因子であるaipCの破壊株もイトラコナゾール感受性になることを明らかにしており、AipAがエンドサイトーシスにおいて機能することが強く示唆された。 最後に、モデル真核微生物である分裂酵母におけるAipAオルソログ、knk1およびSPAC328.04の解析を行った。その結果、SPAC328.04破壊株においてaipA破壊株同様のイトラコナゾール感受性が確認された。しかし、knk1破壊株ではその表現型は見られず、knk1とSPAC328.04が異なる機能を有することが示唆された。さらに、SPAC328.04破壊株は低温かつ高カルシウム濃度条件で感受性を示した。これにより、SPAC328.04をace1(AAA ATPase required under stresses of calcium, cold and ergosterol biosynthesis inhibitor)と名付けた。今後はAipA、Ace1のさらなる詳細な機能解析を行っていく。
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