研究実績の概要 |
研究計画に沿って、成熟味細胞の分化誘導の指標となる味前駆細胞のマーカー候補の探索をDNAマイクロアレイにより行った。まず、味細胞画分とその周囲の味細胞を含まない舌上皮との遺伝子発現を比較し、初期発生や再生に関与する分子で味細胞画分に多く発現するものを抽出した。その後、RT-PCRによりマイクロアレイの結果の確認を行い、in situ hybridizationにより遺伝子発現の位置情報を得た。最終的に発生初期や味幹細胞・前駆細胞の存在する場所で発現するマーカー候補分子として数種類を抽出する事に成功した。抽出したグループにはLgr5やLef1などのWnt関連分子が含まれていた他、他の臓器の発生や再生に関与する分子も含まれていた。これらのマーカー候補分子は、味細胞の発生初期から発現を開始し、成体においても味蕾内で発現していると考えられる。 次に、味細胞の分化において、上記のマーカー候補分子がどのような発現パターンを示すかをin vitroで解析する系の構築を行った。腸管においてWnt関連分子の活性化は幹細胞の活性維持に必須である事が明らかになっており、腸上皮幹細胞の三次元培養系(オルガノイド培養系)も先行研究により確立されている。我々はこの先行研究を参考に、共同研究にて味蕾の三次元幹細胞培養法を確立した(Ren W et al., PNAS, 111, 16401-16406, 2014)。本方法を用いると、in vitroにおいて単一の味幹細胞からほぼ全ての系列の味細胞へと分化する事、機能アッセイも可能である事が分かった。現在、同培養系を用いて、上記で抽出した味幹細胞・前駆細胞のマーカー候補分子の発現パターンを解析を試みている。
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