研究課題
静脈内投与によってshort interfering RNA(siRNA)を肝臓へ効率的に導入するためには、siRNAキャリアの体内動態と細胞内動態の両過程の効率を最大化させる必要がある。脂質ナノキャリアの体内動態を向上するためにはPEG等の親水性高分子修飾が有用であるが、PEG修飾はキャリアの細胞内動態を著しく悪化させる(PEGのジレンマ)。そこで、血中ではPEGを安定的に保持し、酸性エンドソーム内では速やかに脱離させることで両過程の最大化を試みた。pH低下に応答して切断するリンカーとして無水マレイン酸誘導体(CDM)を基盤とし、様々な分子量のPEGを結合させたCDM-PEG誘導体を合成した。CDMは第一級アミンと反応して共有結合を形成するため、初めにモデル化合物としてグリシンを用い、CDM-PEGの脱離能を評価した。その結果、いずれの誘導体も血中pHにおける安定性とpH6.0における速やかな脱離能を示し、目的通りの反応性を示すことが確認された。第一級アミン含有脂質を合成し、それを含む脂質ナノキャリアのCDM-PEG修飾を試みた結果、添加量依存的な修飾量の増加が確認された。また、CDM-PEGの修飾に伴って脂質ナノキャリアの表面電荷が中性に変化したことから、CDM-PEG修飾はキャリアの体内動態を改善することが示唆された。実際に、脂質ナノ粒子の静脈内投与後の肝臓内局在はCDM-PEG修飾によって顕著に変化した。また、キャリアからの脱離について評価したところ、CDM-PEGはpH6.0において10分以内に完全に脱離した。以上より、効率的なsiRNA送達に必要な構成物質を開発したと共に、体内動態・細胞内動態を両立するためのCDMリンカーを介したPEG修飾および酸性環境下における速やかな脱離能を確認することに成功した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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