研究課題
Angptl2阻害薬のぶどう膜炎に対する治療効果については、今まで全く不明であった。この薬剤は市販されていないため、Angptl2阻害薬(ボナック核酸)をボナックから供給を受けこれを使用している。点眼などの局所治療に使用可能であることから全身投与と比べ安全面でも臨床応用しやすいという利点がある。本研究のぶどう膜炎の動物モデルとして、外毒素による非特異的急性前眼部炎症のモデルであるエンドトキシン誘導ぶどう膜炎(endotoxin induced uveitis; EIU)マウスを用いている。まず6- 8週齢のC57BL/6 マウスにAngptl 2阻害薬を点眼し、投与群と非投与群を作成した。点眼はEIU誘導24時間前から3時間毎に行い、リポポリサッカライド(LPS)を腹腔内注射し、EIU を誘導した。6時間後に網膜を摘出しRT-PCRにて、網膜における各種炎症性サイトカイン、ケモカインの発現変化をmRNAレベルで解析した。しかしながらコントロール群と比較し、有意な発現の変化はみられなかった。そのためAngptl 2阻害薬の投与時期、回数ならびに投与方法を改めて検討を行う必要があった。その後、Angptl 2阻害薬を硝子体内投与に投与方法を変更し、投与群と非投与群を作成した。Angptl 2阻害薬の投与はEIU誘導の24時間前に行い、EIU誘導の6時間後に網膜を摘出し各種炎症性サイトカイン、ケモカインの発現変化をmRNAレベルで解析した。現在までの解析でtnfa、ccl2、icam1では発現の低下傾向がみられ、il-6では有意な発現の低下がみられている。これまでの研究で、Angptl 2阻害薬を用いた炎症抑制を示唆する結果が見出された。また炎症抑制を導くAngptl 2阻害薬の至適な投与量、時期、投与方法が判明した。今後はこれらの結果に基づいて、EIUマウスモデルでの網膜血管内の白血球接着数の測定、眼内への炎症細胞浸潤の変化、網膜組織の免疫染色などを行い、さらなる解析を継続する。
3: やや遅れている
当初計画していた投与回数・投与方法で十分な炎症抑制効果がみられなかったため、Angptl 2阻害薬の投与時期、回数ならびに投与方法を改めて検討を行う必要があった。
現在まで当初予定していた点眼における十分な炎症抑制効果は証明されていない。しかしながら点眼においても治療回数、時期を変更することで効果を示す可能性はいまだ残されている。また、硝子体内投与といった臨床でもすでに用いられている手法を用いてAngptl 2阻害薬を投与することにより、EIUマウスモデルにおいて網膜での炎症性サイトカインのmRNA発現の低下がみられた。今後もこの手法を用いて、EIUマウスモデルにおけるAngptl 2阻害薬に対する治療効果を解析していく予定である。
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