研究課題
ヒト臍帯血由来造血幹/前駆細胞(以下:CD34抗原陽性細胞)は多分化能と自己複製能を有する生体において非常に貴重な細胞であるが、その高い増殖能ゆえに放射線の標的細胞となりうることが分かっている。本研究ではCD34抗原陽性細胞の放射線感受性に関与する遺伝子の特徴を明らからにすることを目的として、下記の2項目の実験を行い、以下の結果が得られた。1)造血サイトカインで処理又は未処理の放射線暴露CD34抗原陽性細胞の網羅的遺伝子解析2)造血サイトカインで処理又は未処理の放射線暴露CD34抗原陽性細胞の細胞生物学的、分子生物学的解析分離精製したCD34抗原陽性細胞にX線2Gyを照射し、14日後の骨髄系造血前駆細胞由来コロニーの生存率を観察したところ、生存率は非照射コントロールの約20-30%まで減少した。また、X線照射6時間後における、造血サイトカインで処理・非処理間、またはX線照射群・非照射群間、で遺伝子プロファイルを網羅的に調べたところ、X線非照射群に対し照射群では比較した全ての条件間でup-stream regulatorとしてMyc遺伝子の発現が上昇していると予測された。またX線照射・非照射群間では、どの条件においても共通してEIF4G1遺伝子、PNO1遺伝子の発現が上昇していた。これら二つの遺伝子はMyc遺伝子の下流遺伝子に属し、アポトーシスやオートファジーなどの細胞死に関与している。さらに造血サイトカインで処理をした群ではこれらの遺伝子の発現上昇率は少なくなっていることからも、Myc遺伝子、EIF4G1遺伝子、PNO1遺伝子は造血幹/前駆細胞の放射線感受性に深く関与している可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Jounal of Radiation Research
巻: 57(1) ページ: 35, 43
10.1093/jrr/rrv071