研究課題/領域番号 |
26893008
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柳下 陽子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 産学官連携研究員 (50733838)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 生体分子 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
マウス遺伝学を応用した膵β細胞研究においては、これまでCre-loxpシステムを応用したラットインスリンプロモータ(RIP)による条件付き遺伝子欠失マウスが利用されてきた。申請者は、RIP-Cre条件付Keap1ノックアウトマウスを作出し、膵β細胞においてNrf2を活性化させることにより、糖尿病酸化ストレス障害から膵β細胞が保護されることを見出し、その分子機序を解明した。 RIP-Creを用いた遺伝子改変マウスに関して、膵β細胞以外に脳視床下部でのCre酵素活性がみられ、遺伝子組換えが生じることが明らかとなっている。実際にRIP-Cre条件付Keap1ノックアウトマウスを用いた食餌誘導性肥満モデルの解析を実施したが、全身の代謝変化を認め、視床下部での遺伝子改変の影響を無視できないことから、膵β細胞に着眼した研究展開が困難であった。また、遺伝子組換え効率についても改善の余地があるとされていたことから、本研究計画ではこれらの問題を解決する方策として、視床下部での発現がほとんど無いと報告されているマウスIns1制御領域を利用し、さらにマウスBACクローンを利用したBAC-Ins1-Creトランスジーンを用い、トランスジェニックマウスを作出することを目的としている。この新規Creマウスは、今後のマウス遺伝学研究において優れたモデルマウスとなることが期待される。最終的には、Ins1-Cre条件付きKeap1ノックアウトマウスを作出し、食事誘導性肥満モデル膵β細胞におけるNrf2の機能解析を行う計画である。 初年度はこのマウス樹立において最も重要といえるトランスジーンの作成を実施し、in vitroの実験系で実際に遺伝子の組換えが生じることを確認し、新規Creマウス樹立へむけた基盤作りを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、膵β細胞特異性と遺伝子組換え効率の向上を目指した新規Creマウス樹立にむけ、まずは骨格となるトランスジーン作出を実施した。はじめに、マウスIns1制御領域を利用したmIns1-Luc構築を作出した。すでに1クローンの構築は完成させていたが、Luc活性の評価からより高いIns1プロモータ活性を得られるよう改良を重ね、最もよい構築を採用することとした。次にこの構築を基に、mIns1-Cre構築を作出した。この構築をflox allele遺伝子をもつマウス線維芽細胞にトランスフェクションし、実際にCre酵素活性が得られるか検証を行い、in vitroの実験系においては遺伝子組換えが生じることを確認した。 次のステップとして、マウスBACクローンにこの構築を組み換える予定であり、現在マウスBACクローン購入の準備を進めている。本研究目的達成のための新規Ins1-Creトランスジェニックマウス樹立にあたっては、機能性に優れたトランスジーン作出が最も重要であるといえる。現在までにBAC-Ins1-Creトランスジーンの中心部となる構築の作製を完了したことから、おおむね順調な研究展開ができたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度作出したmIns1-Cre構築は、培養細胞を用いた実験系で遺伝子組換えが生じることを確認しており、マウス個体で発現した際にも実際に組換えが期待できる実用性の高いトランスジーンであると考えられる。このIns1-Cre構築を骨格としたマウスBACトランスジーンの作製とトランスジェニックマウス樹立にむけ、今後の研究を推進させる。 申請者所属の研究室では、すでにこれまでに何系統かのBACトランスジェニックマウスが樹立されており、本年度実施予定の自身のBAC構築作製にあたっては、技術的な助言を得ながら実験を進める予定である。また、同研究室の須田技術補佐員は、インジェクション手技にたけておりマウス樹立に関する知識も豊富である。新たなCreマウス樹立にあたっては積極的な協力を依頼し、専門的な技術を要するマイクロインジェクションについてはサポート体制を整えている。 また新たなマウス系統を完全に確立するまでには時間を要するが、マウスの戻し交配を進めながら解析可能な項目については解析を進める予定である。さらに、Keap1flox/floxマウスは常に繁殖可能な状態で維持しており、Ins1-Creトランスジェニックマウスが樹立され次第、すぐにIns1-Cre条件付きKeap1欠失マウスの作出が可能である。
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