研究課題/領域番号 |
26893009
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 一益 東北大学, 加齢医学研究所, 教育研究支援者 (80738948)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | オピオイド / 疼痛 / 麻酔 |
研究実績の概要 |
申請者は、μオピオイド受容体が欠損することにより、痛覚過敏様の行動変容を示すことが明らかにされている遺伝子改変マウス(μオピオイド受容体欠損マウス)の脳形態をMRI-voxel based morphometryにて網羅的に解析したところ、生体内に備わる下行性疼痛抑制系の起始核となる中脳中心灰白質の体積増加を明らかにした。 しかしながら、体積増加に寄与する要因については明らかにされておらず、本研究課題ではμオピオイド受容体が欠損することに起因する下行性疼痛抑制系の起始核である中脳中心灰白質の体積増加に寄与する要因を明らかにする目的から、野生型マウスとμオピオイド受容体欠損マウスにおいて中脳中心灰白質の細胞構成要素を免疫組織化学的手法を用いてμオピオイド受容体が欠損することに起因した脳形態異常の背後に存在する機序の1つを同定することを目的とした。具体的には、μオピオイド受容体が欠損することによる中脳中心灰白質の形態異常は生得的なものであるのか、あるいはμオピオイド受容体の欠損により疼痛刺激に対する疼痛抑制系が機能しないことが原因であるのかを明らかにする目的から、若齢期のマウスを用いた脳形態をMRI-voxel based morphometryにて解析を試みた。 μオピオイド受容体作動薬は臨床的に周術期、緩和医療において必要不可欠な薬剤である。本研究は生体内に備わる内因性オピオイド系の疼痛制御機構の解明に寄与する基礎研究であり、直接的に臨床現場で役立つものではないが、人類のみならず生物に備わる疼痛制御系の根本に迫る研究課題である。重篤な疼痛は人類はもとより生物の生存や福祉を脅かす問題であることから、本研究は長期的な視点から人類の福祉に寄与する知見の蓄積につながるものであると考えられ、非常に重要な研究であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階において、研究課題申請時に申請した実験計画のうち、組織学的解析において順調に進んでいる。すでに検索結果が明らかになり、関連する学術誌に投稿すべく論文の執筆中である。MRI画像解析においては若齢マウスの解析に工夫を要し、試行錯誤を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
現段階にて、組織解析は順調である。一方、MRI画像解析においては試行錯誤中であることから、画像解析においては研究計画を変更し、他の角度からμオピオイド受容体が欠損することに起因する中脳中心灰白質の形態異常に迫ることも検討している。また、この度の免疫組織学的解析は細胞構成要素の同定を実施しているが、さらに、炎症性サイトカインの同定を目的とした免疫組織染色の実施も念頭に、μオピオイド受容体が欠損することに起因した中脳中心灰白質の形態異常の背後に存在する機序を解明するために有益な情報を1つでも多く得られるような対策を講じる。
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