本研究では成育限界児の相対的副腎不全に低用量バゾプレッシンを投与した場合の安全性と有効性について考察するために,成育限界期のヒツジ胎仔に低用量バゾプレッシンを投与し,その主要臓器の血流量ならびに血管抵抗の変化を解析する.さらに,主要臓器動脈の超音波ドップラー血流速波形から得られるresistance index (血管抵抗の指標) が低用量バゾプレッシンを安全に使用するための臨床的指標となるかどうかを検討するために,各臓器の血流量ならびに血管抵抗と主要動脈のresistance indexとの関連性を解析することもその目的としている. また,成育限界期のヒツジ胎仔肺は著しく未熟であり人工呼吸器では管理できない.そのため本研究ではヒツジ胎仔にポンプレス人工胎盤システムを装着させ,人工子宮内でデータを採取した. 平成26年度は,妊娠95日から104日のヒツジ胎仔12頭のうち10頭で人工胎盤システムの装着に成功し,検体採取が可能な状態とした.そのうち妊娠95日から98日で装着した4頭は,心筋の未熟性によると思われる後負荷不適合のため,より後負荷を上げる可能性のあるバゾプレッシン投与を断念した.そのため低用量バゾプレッシン投与を行ったのは6頭で,投与前後での経皮的超音波検査でのresistance indexの測定とmicrosphereの注入を行うことができた.これにより未熟なヒツジ胎仔における低用量バゾプレッシン投与による主要臓器の循環動態の変動の解析が可能となった.
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