研究課題
精神病発症リスク状態(At-Risk Mental State: ARMS)と非精神病性の精神疾患との関連が注目されている。本研究では、ARMSと自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder: ASD)との関連に着目したものであり、専門外来で操作的にARMSと診断され、精神病移行の有無も判明した集団を対象として、その発達特性を後方視的に調査するものである。そのために、ARMSとして追跡されている参加者とその養育者とに対して、参加者の発達障害傾向の評価を実施し、ARMSとASDの併存割合、症候レベルでの両者の関連性について量的に検討を加えることを目的としている。本年度は、研究実施のための諸準備と一部の参加者への評価を実施した。前者としてはまず、書籍や学術集会への参加、同領域の研究者からの情報収集を通じて、評価法の見直しと予想される結果の再検討を行った。実際に評価尺度を入手し試験的に実践したが、従前の計画に反して本研究での採用が不適切と思われる尺度が存在し、計画の変更を行った。その上で、評価プロトコルの作成、データベースの構築を行い、データ収集と管理を行うための体制の確立を行うと共に、必要な倫理申請を実施し、研究実施の承認を得た。以上の準備の後に、現在通院中の既存症例に対する実際の調査を開始した。また、本研究の一環として、対象者となるARMS症例の特性、ASDを含む併存疾患の割合等を国際学会において報告し、他国の状況と比較した議論を実施した。
3: やや遅れている
研究開始時点の計画では、現在通院中の事例全般に対し評価を実施する予定であったが、実際には年度内には一部の症例に対して調査を実施するにとどまった。達成度がやや遅れている理由として、以下の事項が挙げられる。1.計画段階では十分に吟味して評価尺度を決定したが、一部の評価尺度(PDDAS)を用いた予備的な調査を実施したところ、本研究での使用が適当ではないと考えられたため、評価尺度の見直しを余儀なくされたこと。2.他に進行中の研究課題との兼ね合いで、倫理申請と承認が遅れてしまったこと。
平成26年度末までに調査を実施するための準備は完了し、一部の調査が既に開始されている。従って、達成度がやや遅れているとは言え、概ね順調に研究が進捗しているものと考える。今後の研究を順調に遂行するために、対象者の評価スケジュールを見直し、効率的に接触、評価していけるよう工夫する必要がある。
すべて 2014
すべて 学会発表 (1件)