研究課題/領域番号 |
26893018
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西口 康二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30447825)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 免疫 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
H26年度はまず常染色劣性遺伝が疑われる無色素性網膜色素変性症の患者に対してエクソーム解析を行った。解析の結果、この中で1名ほど既知の網膜色素変性症遺伝子であるRP1にホモで病因と考えられる変異が同定された。残りの患者には少なくとも調べた既知の遺伝子の中では明らかな病因変異は同定されなかった。 並行して、網膜自己抗体を検出するための既報の8つの抗原の蛋白質(IRBP、GNAT1、alpha-Enolase、Arrestin、Recoverin、TRPM1、HSP70、CA2)を大腸菌またはHEK293細胞より精製し、これらの精製蛋白質とサル網膜とマウス網膜を電気泳動後、PVDFメンブレンにtransferし、患者の血清を用いてウェスタンブロットを行った。現時点で、無色素性網膜変性症患者6名、自己免疫網膜症が疑われる患者4名、コントロール患者(正常者、軽度網膜変性、糖尿病網膜症、視神経疾患など7名)の血清を解析した。その結果、自己免疫網膜症が疑われる患者1名にのみ抗alpha-Enolase自己抗体が同定された。さらに、患者血清をマウスに硝子体注射を行ったが、網膜変性は確認されなかった。また、血清を網膜下に注射したところ網膜電気反応の著明な低下と視細胞変性を認めた。しかし、コントロール血清の網膜下注射でも同様な所見が認められたため、患者の自己抗体と網膜色素変性症の因果関係は現時点で解明できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の当初の計画では、網膜自己抗体を有する患者血清をマウス眼内に投与し、その影響を解析することにより同定された自己抗体と網膜色素変性症の因果関係を調べる予定であった。しかし、抗alpha-Enolase自己抗体が同定された患者血清をマウスに硝子体注射を行ったが、網膜変性は確認されなかった。また、血清を網膜下に注射したところ網膜電気反応の著明な低下と視細胞変性を認めた。しかし、コントロール血清の網膜下注射でも同様な所見が認められたため、患者の自己抗体と網膜色素変性症の因果関係は現時点で解明できていない。そこで、予定を変更してalpha-EnolaseをAAV8を用いてマウス肝臓に過剰発現させ、自己抗体を誘導し、adjuvantを用いて自己免疫網膜症を再現できるか検討することにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、無色素性網膜色素変性症の遺伝子解析とin vitroの血清解析(ウェスタンブロット)をさらに症例を増やして行う。In vivoの解析に関しては、計画を変更して、各抗原と自己抗体の意義をマウスモデルを作製することにより検証を試みる。具体的には、まずAAV8を用いて各自己抗原を肝臓で過剰発現する。AAV8注射2週間後にadjuvant としてpertussis toxi nを腹腔内注射する。その後、自己免疫網膜症が誘発されたか組織学的に検討する。
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