本研究では、くも膜下出血後(subarachnoid hemorrhage; SAH)の遅発性脳虚血(DCI)をベッドサイドで簡便に検出し、早期検出と治療介入を可能にする新たな脳循環動態指向型の全身管理法の開発を目的とする。最終的に本管理法の導入により、SAH患者の更なる予後向上を図るのが大きな狙いである。 まずSAH患者のDCI予測のためのNIRSを用いた基本データ採取実験を行った。近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy; NIRS)による局所脳酸素飽和度(=局所混合血/組織酸素飽和度) (regional cerebral oxygenation saturation; rSO2)の非侵襲・連続モニタリングにおける各種データの採取後、前向き研究のための循環管理プロトコールを設定した。その結果、心拍出量モニターを重症度によって使い分けて術後管理を行い、DCI発症時にNIRSとの併用する方法が、SAHの予後改善の上で有効であることが明らかとなった。さらに、NIRSによるrSO2のDCI検出感度を高めるために、蛍光色素インドシアニングリーン(indocyanine green; ICG)を用いてSAH後のDCIの早期検出のみならず、その発症前予測を視野に入れたrCBF低下に相当する脳血流係数(blood flow index; BFI)のカットオフ値を設定した。さらにDCIの予防的治療を念頭に入れた循環管理プロトコールを設定し、従来法との比較による前向き研究を遂行中である。 上述の結果は国際および国内学会で発表し、学術論文への掲載につなげることができた。研究進捗は順調であり、最終的に初年度で研究総括を行い、更なる動物実験へ向けた研究の企画へと繋げることができた。
|