研究課題/領域番号 |
26893022
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野 真理子 東北大学, 大学病院, 医員 (60736031)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 歯原性上皮細胞 / NGF / p75 / 歯 / 発生 |
研究実績の概要 |
昨年度末までの研究で、我々はNGFが歯原性上皮細胞において低親和性受容体p75を介して細胞増殖の促進を行うことを明らかにしてきた。これより、完全長p75(pEF6/p75)およびp75細胞内ドメインを欠失させた発現ベクター(pEF6/p75-ΔICD)を作製し、歯原性上皮細胞株(SF2細胞)に遺伝子導入をした。それぞれの過剰発現細胞を用いて細胞増殖の比較を行ったところ、完全長p75過剰発現細胞においては有意に細胞増殖が誘導されたが、p75-ΔICD過剰発現細胞では増殖促進はみられなかった。 また、ウエスタンブロット法を用いてNGFがp75に結合した後のシグナル伝達経路を解析したところ、ERK1/2のリン酸化が強く認められた。さらに、ERK1/2の上流分子MEKの阻害剤U0126による処理を行ったSF2細胞において、U0126の濃度依存的にNGFによる細胞増殖が抑制された。これよりNGFはp75に結合後、その下流でERK1/2をリン酸化することにより歯原性上皮細胞の増殖シグナルを伝達していることが示唆された。また、NGFと同じく神経栄養因子ファミリーに属するNT-4はTrkBに結合後、ERK1/2をリン酸化し歯原性上皮細胞の分化を促進することがこれまで明らかになっているが、こちらのシグナルとの違い(伝達過程、介在する分子の違いなど)および細胞動態に与える影響についても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯原性上皮細胞においてNGFが低親和性受容体p75に結合後、ERK1/2をリン酸化することにより細胞増殖のシグナルを伝達していることが、ウエスタンブロット解析およびERK上流分子阻害剤添加による細胞増殖比較実験より明らかとなった。また、ERKの他にp75の下流に存在する分子群についても同様の解析から明らかになってきている。 NGF-p75シグナルによる歯原性上皮細胞の増殖メカニズムについて解析するため、全長p75(pEF6/p75)とp75細胞内ドメインを欠失させた発現ベクター(pEF6/p75-ΔICD)を作製し、遺伝子導入をした。それぞれの過剰発現細胞を用いて増殖の比較検討を行った。その結果、完全長p75過剰発現細胞において有意に増殖が誘導されたが、p75-ΔICD過剰発現細胞では増殖促進は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
p75受容体の細胞内切断が歯原性上皮細胞の増殖に関与しているか、p75変異体ベクターを遺伝子導入した歯原性上皮細胞を用いた解析を行っていく。これまでp75受容体の切断・遊離が他の細胞種において細胞の生存、成長、アポトーシスなど多様な細胞動態に関与しており、NGFがこのトリガーとなっていることが報告されている。歯においても同様の現象が認められるかについて検討していく。 さらに、NGFおよびp75欠損マウスの歯の表現系について、マウス歯胚を用いた組織学的検討を行う。また、これらのマウス歯胚より、歯胚細胞を初代培養することで、NGFおよびp75が完全に欠損した際の歯胚細胞の増殖や分化に及ぼす影響について解析を行う。 p75はより未分化な歯原性上皮細胞に発現が認められたことから、将来的に再生医療に用いる細胞ソースとして未分化歯原性上皮細胞の効率的大量精製技術への応用が期待される。抗p75抗体を用いたp75陽性細胞の細胞ソート技術の確立、また回収した細胞に対しての品質評価を行っていく。
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