研究課題/領域番号 |
26893027
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永井 恵 筑波大学, 附属病院, 医員 (00734352)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | 肥満細胞 / 血管炎 / MPO-ANCA / 免疫学 |
研究実績の概要 |
肥満細胞は、血管の周囲に存在する細胞で、炎症を始めとする免疫反応の司令塔である。肥満細胞を欠損するマウスは、MPO-ANCA血管炎モデルにおいて強い腎炎をきたしたことから、肥満細胞がMPO-ANCAによる腎炎の表現系を負に制御すると考えられる。ヒトへの臨床応用を考えると肥満細胞を欠損させることは現時点では困難であるため、我々は、肥満細胞の機能を制御することでANCA関連血管炎の治療となりうるかを検討する。 CD300aは、肥満細胞表面に強く発現する免疫受容体である。CD300a遺伝子欠損マウスを用いた敗血症モデルから、肥満細胞からのサイトカイン産生を調節する機能を有することが明らかとなった(Oda C et al. J Exp Med. 2013)。血管炎モデルにおいても、血管周囲に存在する肥満細胞上に存在するCD300aが、炎症性サイトカインの産生を制御していると仮説した。 今年度の進捗として、1)肥満細胞特異的CD300a欠損マウスの作成:骨髄より誘導した肥満細胞を肥満細胞欠損マウスに移入する実験系であるが、種々の検討の結果、肥満細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスを併せて調整中である。2) MPO-ANCA血管炎モデルの誘導:MPO遺伝子欠損マウスにMPOを免疫した個体血清から抗MPO-IgG抗体を精製し、MPO野生型マウスに受動免疫することで、腎炎を誘導するが、今年度は抗MPO-IgG抗体調整に時間を要しており、CD300a遺伝子欠損マウスへの腎炎誘導実験は未実施である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CD300a遺伝子欠損マウスラインに関しては概ね準備ができている。 MPO遺伝子欠損マウスラインの調整に時間を要した。MPO-ANCA血管炎モデルに成功した研究グループは多くなく、やはり我々も免疫および抗体精製の条件検討に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
1) 肥満細胞特異的CD300a欠損マウスに関しては、in vitroでの肥満細胞の誘導に時間を要するため、肥満細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスの作出を試みる。2) MPO-ANCA血管炎モデルに必要なMPO遺伝子欠損マウスから得られる抗MPO-IgGの精製中であるが、腎炎を誘導するための抗体の精製に至っておらず、他の古典的な腎炎モデルとして知られるBSA(ウシ血清アルブミン)免疫モデルの誘導も考慮する。1)および2)の研究が遂行されれば、3)血管炎モデルにおける肥満細胞上のCD300aの機能的意義の解明のため、腎炎の病理組織から肥満細胞を単離して、サイトカイン発現解析あるいは機能実験を実施する。そのための腎炎の単離技術の習得や機能解析の予備実験を実施後に、産生サイトカイン解析を行い、CD300a遺伝子欠損マウスと野生型マウスを比較する。
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