血管周囲に存在する肥満細胞の機能を制御することで血管炎の治療法を探索する目的とした研究であり、1)血管炎モデルの確立、2)腎組織から肥満細胞を同定して機能を解析すること、が必要であった。1)効率の良い抗好中球細胞質抗体(ANCA)を作成するために、MPO遺伝子欠損マウスを入手し、それにMPO蛋白を免疫した。MPO蛋白精製の原法は、高度な蛋白精製の技術が必要なため、新規の方法としてリコンビナント蛋白の免疫を試みた。結果として、力価の高いMPO-ANCA(506.4±28.6 ng/mL [mean±SEM])を得ることができた(コントロールマウスにMPOを免疫した場合 [28.3±1.9 ng/mL])。しかしながら、原法で得られたMPO-ANCAとは異なり、マウスに受動免疫を施しても腎血管炎を誘導することはできなかった。この結果から、好中球細胞質蛋白を精製する方法により、得られるANCAが異なり腎血管炎の病原性という機能に影響を与えることが示唆された。2)Naiveもしくは(1)でMPO-ANCAを受動免疫した野生型マウスの腎臓を採取し、コラゲナーゼ等で処理した単離細胞をフローサイトメトリ法で解析した。肥満細胞の同定には、CD45陽性c-Kit陽性FceRIa陽性の生細胞を定義として用いた。いずれのマウス腎においても肥満細胞を同定することができなかった。(1)で腎血管炎を誘導できなかったため、この結果からは、血管炎を来した腎臓において肥満細胞が増殖あるいは集簇して機能するかに結論はできなかった。
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