1)神経栄養因子シグナルの一つであるTrkBシグナルを増強すると、慢性の神経障害性疼痛状態で起こる内因性鎮痛の減弱が改善することを昨年示した。この時、ノルアドレナリンアルファ2受容体拮抗薬を脊髄髄腔内へ投与すると、この効果は部分的に消失した。以前の研究から確認されていたNovel object recognition testにおける低下にも改善効果を認めた。いずれも正常動物では影響が見られなかった。 2)ノルアドレナリン作動性神経への影響が示唆されたことから、脊髄後核および前頭前皮質におけるdopamine beta hydoxylaseの免疫染色を行ったところ、神経障害性疼痛モデルでは有意な変化は観察されなかった。青斑核の興奮性を見るために、pCREBの免疫染色を行ったところ、神経障害性疼痛モデルでは正常動物と比較してpCREB陽性細胞比率が低かったが、TrkB作動薬処置により正常動物と同レベルに回復した。このことから青斑核の興奮性の変化が内因性鎮痛や認知機能の変化に関与しており、TrkB作動薬はそれを改善させる可能性があることが示唆された。 3)青斑核マイクロダイアライシスによる評価は結果を解析中である。
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