慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者45人の血清IFNγ濃度を測定、測定範囲以下群(陰性群)と測定範囲以上群(陽性群)の2群にわけて解析した。肺血行動態と予後に関しては両群において有意な差は認められなかったが、肺動脈造影による血栓部位評価では、陽性群の方が有意に末梢型であった(P=0.006)。 CTEPHに対する肺動脈血栓内膜摘除術にて摘出された血栓内膜組織から、CD31抗体を用いた磁気細胞分離にて血管内皮細胞(血栓由来内皮細胞)を分離することに成功した。 BioPlexによる検討では、肺動脈内皮細胞はIFNγ刺激によりIL-1β・IL-6・RANTES・TNF-α等の炎症性サイトカイン・ケモカイン産生の上昇を認めた。同様の検討を肺動脈平滑筋細胞にて行うとIL-1β・RANTES産生の上昇、TNF-α・VEGF産生の低下を認めた。両細胞の結果で逆になったTNFαとVEGFに関しては、値とIFNγ投与による変化の程度からTNFαは内皮細胞の影響が強く、VEGFは平滑筋細胞の影響が強いことが示唆された。従って肺動脈全体としてはIFNγ刺激が炎症・血栓形成誘導に関与していることが予想された。 RT2ProfilerTM PCR Arrayによる検討では、血栓由来内皮細胞はIFNγ刺激がない状態でもコントロールに比べてCXCL1・IL8・MAP2K1・PTGS2のRNA発現が上昇しており、IFN刺激により更に発現が亢進した。またコントロール細胞では低下するCSF1のRNA発現が亢進し、更にF2RL3のRNA発現低下とKDRのRNA発現上昇を認めた。つまり、血栓由来内皮細胞は定常状態でもコントロールに比べて炎症関連RNA発現が上昇しており、IFNγ刺激により更に発現が亢進、そして凝固に関与するRNA発現は凝固抑制の方向に誘導されるという特徴が確認された。
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