研究実績の概要 |
当科では培養細胞を用いた基礎研究は食道癌細胞を用いて行ってきたため、食道癌培養細胞株を用いた検討を行った。機能解析を行い、エクソソームが細胞増殖に与える影響をcell proliferation assay(Cell Conting Kit-8, Dojindo)を用いて評価した。食道癌細胞株に対し、濃度依存的に細胞増殖を抑制することが判明した。現在、胃癌細胞株を用いた検討を継続中であり、良好な結果を得つつある。また、ヒト食道癌細胞株(TE2, T.Tn)を、エクソソームフリー血清(Exosome-depleted FBS Media Supplement, System Biosciences)を添加した培養液にて培養し、その上清より超遠心法を用いてエクソソームを抽出した。抽出したエクソソームを緑色色素(PKH67, Sigma-Aldrich)で染色した後に細胞株へ添加した。24時間後の蛍光顕微鏡下での観察では、細胞内へのエクソソーム取り込みがイメージング可能であった。また、胃癌細胞株(MKN-1、MKN-28、MKN-45、MKN-74、KATO-III、SH10-Tc)がヌードマウスへの腹腔内接種により腹膜播種モデルが成立することを確認した。食道癌細胞株(T.Tn、TE-2)のヌードマウス皮下腫瘍モデルの作成を確認した。In vivo modelの成立は確認されたので、エクソソームの体内挙動のイメージング、in vivoにおける、増殖、浸潤能に与える影響を今後解析予定である。 次に、当科にて-80℃ディープフリーザーで保存した食道癌、胃癌患者血清、血漿および胃癌患者腹水、胃癌手術時腹腔内洗浄液に関してエクソソーム抽出を試みた。胃癌手術時腹腔内洗浄液に対するエクソソーム抽出ならびに解析は、胃癌腹膜播種転移の機構をさぐる重要な一歩になると仮定し、同検体の手術時における採取を行い、症例数の増加に努めた。約30例の収集を行い、-80℃に分注、保存し使用可能となっている。
|