メチル水銀は中枢神経障害を引き起こす有害物質であり、魚介類に多く含まれる。一方、魚介類にはエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった高度不飽和脂肪酸(PUFA)が多く含まれる。魚介類摂取はメチル水銀の体内蓄積というリスクとPUFA摂取のベネフィットという二つの面がある。本研究は同時に取り込まれたPUFAがメチル水銀細胞応答に対しどのような影響を及ぼすのかを明らかにすること、その分子機構の解明に迫るというものである。 平成26年度は、不飽和脂肪酸を合成できないfat変異体のメチル水銀毒性添加による生育および生存の評価を行った。また、先行して哺乳類細胞を用いたメチル水銀応答分子の検討を行った。その結果、小胞体ストレスのマーカー分子群やオートファジーに関連する分子が発現変動することを見出した。さらに、このこれらの分子のいくつかはノックダウンによりメチル水銀に対する脆弱性を示した。これらの結果はメチル水銀の毒性軽減に大きく機能している分子であることを示唆しており、新たなメチル水銀応答機構の解明に繋がると考えている。
|