本研究では、疾患時に発現・機能変動するトランスポーターは疾患状態に応答して物質輸送を制御しており、通常条件下ではその重要性が見出されずにいるという仮説のもとに、動脈硬化症の病態に影響する物質輸送を担う、疾患修飾因子としてのトランスポーター群を新規に解明することを目的とする。昨年度までに候補となる機能未知トランスポーターとしてSLC-Xを見出し、本トランスポーターが炎症刺激に応答して発現し、マクロファージにおいて炎症制御に関与していることを発見した。本年度は以下のような知見を得た。主要な炎症制御機構の一つとしてIL1betaやIL18といった炎症性サイトカインの分泌を制御するインフラマソームがあげられる。SLC-X KDの効果がインフラマソームに影響を与えているか否かを検討するため、マウス腹腔マクロファージ(MPM)、及びマウスマクロファージ由来の培養細胞J774においてIL1betaの分泌に対する本トランスポーターのKDの効果を検証した。結果、分泌の上昇が認められたことからSLC-X KD時にはインフラマソームが亢進しているものと考えられる。SLC-Xの機能とこれら炎症制御の関係性を明らかにするため、次にSLC-Xの局在を検証した。N末端にHAタグを導入したヒトSLC-Xをクローニングし免疫染色法によりその局在を確認したところ、本トランスポーターはLAMP1やLysotrackerと共局在することが明らかとなった。また磁気ビーズを用いた方法論によりリソソームを単離しウェスタンブロット法により発現量を比較したところ、SLC-Xはリソソーム画分に濃縮されることを見出した。これらの結果より、SLC-Xはリソソームにおいて機能しているものと推察される。またSLC-Xの個体での重要性を検証するためにノックアウト(KO)マウスの作製を行っており、一つのホモラインの確立に成功した。
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