研究課題
マスト細胞は、細胞内顆粒の構成成分や生体における存在部位の違いから、結合組織型と粘膜組織型に分類されてきたが、組織特異性の獲得背景や意義について詳細は不明であった。我々は、細胞外ATPに対する受容体の一つであるP2X7受容体が、粘膜型マスト細胞の活性化を司る分子であることを独自に開発した1F11抗体を用いた解析により明らかにし、更にマスト細胞に発現するP2X7受容体の量が組織間で異なっていることを見出した。そこで本研究では、組織特異的マスト細胞制御因子の探索を主眼とし各組織によって異なるマスト細胞活性化制御機構について解析した。はじめに、P2X7受容体のように組織間で発現レベルが異なる分子を探索する目的で、骨髄由来マスト細胞と皮膚や腸管、腹腔といった様々なマウスの組織からマスト細胞を単離し、遺伝子プロファイリングを行った。その結果、抑制性シグナルの伝達が予想される受容体の一つが、皮膚マスト細胞で特異的に高発現し、その他の組織では発現していないことを見いだした。皮膚のマスト細胞に発現する抑制性受容体が、皮膚組織特異性を規定する組織環境による制御を受けている可能性が考えられたため、骨髄由来マスト細胞を用いた皮内移入実験を行った。その結果、細胞移入数日後に、上記の抑制性受容体の発現上昇が皮膚マスト細胞で観察され、この誘導には皮膚の線維芽細胞が重要であることも明らかとなった。また、ハプテン誘導生皮膚炎モデルを用いた解析から、当該受容体をコードした遺伝子を欠損マウスでは野生型マウスと比較して耳介腫脹の増大が観察され、炎症細胞の浸潤の亢進も観察されたことから、皮膚組織特異的マスト細胞鎮静化機構の存在が明らかとなり、以上のことから、この抑制分子の誘導機構の解明が新たなアレルギー・炎症の治療法の開発つながることが示された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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