研究課題
骨髄異形成症候群(MDS)は予後不良な疾患であり急性骨髄性白血病(AML)に形質転換することが知られているが、その詳細なメカニズムは十分に解明されていない。申請者はこれまでに作成したASXL1変異体を用いたMDSモデルマウスを用いて、MDSクローンがSETBP1遺伝子変異を獲得することで形質転換することを臨床サンプル、ならびに細胞株・マウスを用いた実験により明らかとした。また、病態メカニズムを明らかにすることで新たな治療ターゲットの可能性を示した。本研究により明らかにした概要は、(1)SETBP1変異はMDS検体においてASXL1変異MDSと有意に共存し統計学的に優位な予後不良因子でありAMLへの形質転換に関与する。(2)細胞株を用いた実験でSETBP1変異はアポトーシス抑制、分化抑制に寄与する。(3)マウス骨髄移植モデルによりASXL1変異/SETBP1変異双方を発現した造血幹細胞はMDSではなくAMLを惹起する。(4)そのメカニズムとしてPP2Aの抑制、HOAX遺伝子の発現誘導、TGFβシグナルの抑制の3つが複合的に関与していることを示した。これらの知見は、MDSからAMLへの形質転換のメカニズムの一端を示しただけでなく、きわめて予後不良である形質転換後の治療ターゲットとなりうるパスウェイを同定した点で今後大きな発展が期待される。そのためにはさらに詳細なメカニズムの解析が必要であるが、申請者のこれまでの研究内容からヒストンアセチル化の観点からの治療応用が望まれる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Exp Hematol
巻: 44 ページ: 172-176
doi: 10.1016/j.exphem.2015.11.011
Leukemia
巻: 29 ページ: 847-57
doi: 10.1038/leu.2014.301.
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/clinical_oncol/result.html