研究課題
本研究は皮膚悪性リンパ腫において、様々なサイトカインを産生しているB細胞がどのような役割を果たしているのかを臨床検体を用いて解析することを目的としている。昨年度はサイトカイン産生B細胞の中でも、近年注目を集めているIL-10産生B細胞(制御性B細胞)について検討を加えた。皮膚悪性リンパ腫の中でももっとも頻度の高い菌状息肉症、セザリー症候群の患者の血液中のIL-10産生B細胞の割合は健常人と比較して、有意に低下していた。また、IL-10産生B細胞を豊富に含んでいることが知られているCD24(hi)CD27(+)B細胞やCD24(hi)CD38(hi)B細胞に関しても、その頻度が低下していた。また、菌状息肉症、セザリー症候群それぞれを分けて、健常人と比較した場合においても、健常人より有意に低下しており、過去に報告されているIL-10を産生している制御性T細胞がこれらの患者において頻度が低下しているという結果と免疫学的な方向性は一致していると考えられた。また、CD24(hi)CD27(+)B細胞数、CD24(hi)C38(hi)B細胞数、IL-10産生B細胞数は菌状息肉症、セザリー症候群の病勢マーカーとして知られている血清LDH値と逆相関を認めた。これにより、制御性B細胞の減少が皮膚悪性リンパ腫の病期進行と関与している可能性が考えられた。臨床検体に関しては、さらにサンプル数を増やして、更なる解析を加える予定にしている。
2: おおむね順調に進展している
本研究は皮膚悪性リンパ腫において、様々なサイトカインを産生しているB細胞がどのような役割を果たしているのかを臨床検体を用いて解析することを目的としている。昨年度はIL-10産生B細胞(制御性B細胞)に関しての臨床検体を用いた検討を進め、制御性B細胞が皮膚悪性リンパ腫患者で減少しており、病勢の進行に関与している可能性を提示することができた。これにより、B細胞をターゲットとした皮膚悪性リンパ腫の治療ができると考えられた。
今後は上記に記載したように、さらにサンプル数を増やして、臨床データの検討をする予定である。また、Hut 78 cell、Ki-JK cell、MyLa cell、SeAx cell、HH cellなどの複数のリンパ腫細胞株を使用し、制御性B細胞のリンパ腫細胞株への直接の影響を検討する予定としている。具体的には、リンパ腫細胞株の生存率はAnnexin V FITC Apoptosis Detection Kit I(BD Pharmingen社)を用いて、Annexin VおよびPropidium Iodideにて細胞株を標識し、フローサイトメトリーにて測定する。増殖率に関してはCoulter Counter(Beckman Coulter社)を用いて計算した細胞数を用いて検討する。また、マウスの皮膚にリンパ腫細胞株を接種し、IL-10産生B細胞を同時にadoptive transferすることによって腫瘍の発育の違いを検討する予定としている。この実験系ではin vitroの実験系とは異なり、リンパ腫細胞株への直接の影響のほかに腫瘍細胞の周囲の微小環境への影響にも左右されるため、実際の患者の病変部において、起きていることをより模倣できると考えられる。サイトカイン産生B細胞により腫瘍の成長に変化が見られた場合には、そのサイトカインの中和抗体全身投与することで、腫瘍の成長の変化が中和抗体によって阻害されるかどうかも検討する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件)
British journal pf dermatology
巻: 未定 ページ: 未定
10.1111/bjd.13696.
Journal of dermatologic science
10.1016/j.jdermsci.2015.02.010.
Journal of dermatology