本研究は皮膚悪性リンパ腫において、さまざまなサイトカインを産生しているB細胞がどのような役割を果たしているか、さらにはB細胞が産生しうるサイトカインの皮膚悪性リンパ腫のおける病態への関与について検討することを目的としている。平成28年度はIL-10産生制御性B細胞についての更なる検討を加えると同時に、B細胞も産生することが報告されている血管増生因子についての検討を加えた。 昨年度、皮膚T細胞リンパ腫である菌状息肉症、セザリー症候群の患者の末梢血中では、IL-10産生制御性B細胞およびその細胞を多く含んでいる分画であるCD24(hi)CD27(+)B細胞やCD24(hi)CD38(hi)B細胞の割合が減少していること、それらの数が菌状息肉症、セザリー症候群の病勢マーカーである血清LDH値と逆相関を示していることを報告したが、今年度はさらに症例数を増やして検討したところ、やはり同様の結果が得られた。菌状息肉症、セザリー症候群の患者では制御性T細胞も減少していることが知られており、これらの制御性細胞群が腫瘍性T細胞の活性を抑制している可能性が示唆された。 さらに、本年度はB細胞も産生しうる血管増生因子であるVEGF-Aの皮膚T細胞リンパ腫における役割の検討を行った。菌状息肉症、セザリー症候群の患者の皮膚ではVEGF-A mRNAの発現が上昇しており、病勢マーカーとなる皮膚組織中のCCL27 mRNAの発現と正の相関を認めた。さらに、末梢血中におけるVEGF-Aの発現も健常人と比較して上昇しており、治療後には低下するという病勢と並行した動きが確認された。また、血清中VEGF-A値はかゆみの程度を反映するさまざまなマーカーと相関しており、VEGF-Aを抑制することが菌状息肉症、セザリー症候群の病勢、かゆみを抑制する上で、有効な治療戦略になる可能性が示された。
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