研究課題/領域番号 |
26893057
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
足立 克之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90735200)
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研究期間 (年度) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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キーワード | Reverse cell / iPSC由来子宮頚癌モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は子宮頚癌のがん化モデルを確立する事である。そして26年度の実施計画としては、1)iPS細胞からの扁平上皮・円柱上皮境界細胞の分化誘導。とそれに対して2)遺伝子導入後の子宮頚癌細胞モデルの樹立であった。 現在の到達点としては1)についてはほぼ達成され、2)についても現在進行中であることから概ね計画通りであると考えている。 概要: 1. 山中京都大学教授が健常人より樹立されたiPS細胞(201B7)を理研細胞材料開発室より供与され培養を開始した。培養条件の最適化を行い安定的に培養を行うことが出来るようになった。 2. iPS細胞から中間中胚葉への分化については既に既報があるためそのMethodを参考にしCHIR99021およびTTNPBを添加することでiPSより中間中胚葉への分化誘導を行った。形態学的な変化を見るだけではなく中間中胚葉のマーカーであるOSR1、WT1、EYA1が誘導された細胞に発現していることをPCRや免疫組織染色にて確認した。 3. さらに中間中胚葉に分化した細胞にKeratinocyte-SFMを添加し培養を行うとp63やCK17、CK5などのReverse cellのマーカーと考えられている蛋白の発現が上昇していた。これらはPCRや免疫組織染色にて確認した。現段階ではReverse cellと断定することは難しいものの、Reverse cell likeなものは確立しえたと考えている。今後は次のHPVE7の遺伝子導入をする前にさらにこれらの細胞がReverse cellに近いことを証明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:iPSCの培養を安定的に行うことは容易なことではなく、私はEmbryonic stem cellもiPS細胞の培養もアメリカの研究室で行っていた経験があったが、本研究室ではiPS細胞を培養した経験がなかったことから、当初安定した培養環境を整える最適化することに一定の時間を要した。しかし、安定的に培養が可能になった後は既報の方法に基づき目的とする中間中胚葉までの分化は予定通り行われた。またその後、Reverse cellへの分化については一部暴露量、暴露時間などに工夫が必要であったものの今のところは意図する細胞が得られていると考えている。 今は得られた細胞が本当に意図するものであるのか、今後の研究に耐えうるのか、また客観的にみて他人に信用してもらうための証拠を積み上げている。その方法としてはPCRやウエスタンブロット、FACSなどで表面抗原の発現パターンを確認している。種々の方法でp63やCK17、CK5などのReverse cellのマーカーと考えられている蛋白の発現が上昇していることが確認されている。今の時点では少なくともかなり本物に近いReverse cell like な細胞を確立しえたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究:今後は樹立したRevers cellに対して癌タンパクの一種であるHPVE6,E7タンパクの遺伝子導入し、その細胞のふるまいを観察する。その上でこちらの予想通りがん化が起こるようであればそのパスウェイ解析を行い、遺伝子発現の変化などをとらえていきたい。また、子宮頸癌細胞モデルが確立した後には、それを細胞株化する必要がある。 つまりiPS細胞から子宮頸がん細胞モデルまで分化誘導が行えても維持管理できなければ今後の抗がん剤に対する薬剤反応性などを確認することは困難である。分化誘導を起こすことも大事であるが、一方でその阻害剤を発見し適切な暴露量、暴露時間を見極めることで細胞株化することを次の年度の目標と考えている。細胞株が樹立されたのちにはその遺伝子発現の多様性だけではなくエピジェネティクスなども重要となりタンパク発現とゲノムの関係だけではなく、エピジェネティクスとの関係性も見ていく必要があると考えている。子宮頸がん細胞モデルの分化誘導パスウェイが解明され、さらにその後それが細胞株化されればその後は薬剤反応性などを見ることなどができ大変有効な研究材料となることが予測される。
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