本研究では、特殊な細胞培養法である「三次元スフェロイド培養法」に着目し、歯髄細胞を三次元スフェロイド培養した場合に象牙芽細胞分化が促進されるメカニズムを解明することを目的としている。 平成26年度は、不死化したマウス歯乳頭細胞を三次元スフェロイド培養専用の培養皿に播種した後、6時間、12時間、24時間経過後に細胞を回収し、RNA抽出を行った。象牙芽細胞・骨芽細胞分化を検討するため、分化マーカーであるDentine sialophosphoprotein (Dspp)、Alkaline phosphatase (Alp)、Bone morphogenetic protein2 (BMP2)の発現を、定量的PCRを用いて調べた。対照群として一般的な平面の培養皿でも培養を行った。その結果、三次元スフェロイド培養した細胞は、6時間後には培養皿中央に細胞の集積を認め、12時間、24時間と時間が経過するほどに細胞の集合体の透明性が低下していることが確認された。分化マーカーの発現は、三次元スフェロイド培養した細胞では12時間後にAlp、BMP2が、24時間後にはDsppの発現が上昇することを認めた。この結果、比較的早期に分化マーカーが上昇することから、三次元スフェロイド培養における象牙芽細胞分化の促進は、細胞が集積することによる細胞間の物理的な圧迫や酸素濃度の低下だけではなく、何らかのシグナルが関与している可能性が考えられた。
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