本研究は、三次元的に細胞を培養する「三次元スフェロイド培養法」を用いて、歯髄細胞が象牙芽細胞に分化促進されるメカニズムを解明することを目的として行った。 平成26年度は、不死化したマウス歯乳頭細胞を、三次元スフェロイド培養専用の底面が低接着加工された培養皿に播種し、24時間培養後、細胞を回収、RNA抽出した。抽出したRNAを定量的PCRで解析したところ、通常の培養皿で平面培養した細胞と比較し、象牙芽細胞・骨芽細胞分化マーカーであるDentin sialophosphoprotein (Dspp)、Alkaline phosphatase (Alp)、Bone morphogenetic protein2 (BMP2)の発現が亢進したことを確認した。 平成27年度は、象牙芽細胞・骨芽細胞分化マーカーの発現が亢進したメカニズムの解明を主軸とし実験を行った。三次元スフェロイド培養では細胞・細胞間、細胞・細胞外基質間の接触が、平面培養と比較して密となり、分化シグナルが入りやすい環境となると仮定し、そのシグナルの一つとしてインテグリンシグナルに着目した。インテグリンシグナルを阻害するためFocal adhesion kinase阻害剤、Extracellular signal-regulated kinase 1/2阻害剤を三次元スフェロイド培養した細胞に添加したところ、添加しないものと比較し、AlpおよびBmp2の発現が抑制されたことを確認した。以上より、三次元スフェロイド培養した歯乳頭細胞の象牙芽細胞・骨芽細胞分化マーカー発現の促進には、インテグリンシグナルが関与している可能性があると考察した。
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