骨表面と迅速に接合するデバイスが実現すれば,骨に固定源を求めた有効性の高い歯科矯正治療をより安全に提供することができる.そこで申請者は,骨表面とデバイスの迅速な接合を得るために必要な,安全かつ確実な初期固定および骨原性細胞の動員を同時に満たす中空のピンを応用したデバイスを新たに考案した.平成26年度は純チタンで試作デバイスを作製し,ラットを用いた動物実験で生体内におけるデバイス形状の妥当性を評価した. 試作デバイスの作製には,外径2.4 mm,肉厚0.25 mmの純チタン製の管を使用した.ピン部の長さは2.0 mm,スリットは4つとし,外翼は穴あり1対,穴なし1対で計4つとした.ピンデバイスを設置する最適な下穴径は,厚さ1.0 mmのアクリル板にデバイスを設置する際の押込み力や設置後の初期固定力について触感覚で評価し,2.2~2.3 mmとした. 動物実験の対象は12週齢SD系雄ラットとし,脛骨膝関節部内側に深さ3 mmの下穴をあけピンデバイスを設置した.その際,穴のある外翼の対が脛骨の長軸方向になるようにした.設置から4週間後,脛骨とともに試料を回収し,マイクロCTによる観察および力学試験を行った (n=3).力学試験の対照として,既存の歯科矯正用アンカースクリューを用いて同様に力学試験を行った. マイクロCTの再構築画像から,ピン内腔に新生骨の形成が確認された.新生骨は周囲の皮質骨と同程度の位置に限局して認められた.また,外翼の一部は新生骨で被覆されていた.力学試験で求められた最大強度の平均は,ピンデバイスでは48.7 N,アンカースクリューでは37.8 Nであった. 以上より,新たに考案したピンデバイスでは設置4週間で内腔および周囲の骨表面に新生骨が形成され,既存の歯科矯正用アンカースクリューと同程度の骨接合強度を有していることが示唆された.
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