1.背景:本研究において、活発な内分泌代謝臓器としての褐色脂肪に着目し、心不全や肥満ストレス下に生じる褐色脂肪不全の病的意義を明らかにしたいと考えた。 2.結果 2-1. 心不全における褐色脂肪不全の病的意義の解明 左室圧負荷を用いてマウス心不全モデルを作成したところ、心不全時には過剰な交感神経刺激により褐色脂肪不全が生じることがわかった。また、心不全時に機能不全に陥った褐色脂肪で代謝的リモデリングが生じ、中間代謝産物が不全褐色脂肪から漏出し、心筋代謝を負に制御する可能性が示唆された。心不全モデルマウスに褐色脂肪移植を行うと心機能が改善すること、褐色脂肪を支配する交感神経を除神経したマウスに圧負荷モデルを作成すると心機能低下が改善することもわかった。現在様々な心不全モデルにメタボローム解析を行い詳細な分子機序の解明に挑んでいるところである。 2-2. NASH肥満マウスの作成と標的アディポカインの機能解析: 野生型マウスに8ヶ月高脂肪食(肥満食)負荷を行うと著しい肥満に加え肝臓の線維化が生じ、NASH肥満モデルを作成することができた。肥満ストレス下で褐色脂肪組織特異的に発現が上昇する肥満関連線維化促進分泌型タンパク質「obesity associated pro-fibrotic protein (OAFP)」に着目し、肥満→NASH→肝臓線維化→肝硬変という一連の病態に褐色脂肪から分泌されるOAFPが関与するか検証することとした。肥満NASHマウスの褐色脂肪組織や血液、NASH患者の血液でOAFPの発現の上昇を認めた。OAFP過剰発現モデルマウスでは、肝臓の線維化が促進することがわかり、現在ノックアウトマウスを作製中である。OAFPが肥満ストレスに伴い褐色脂肪組織で発現レベルが上昇する詳細な分子機序を検証することが今後の課題である。
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