研究実績の概要 |
胆汁分泌との関連が注目されているAQP-1と胆道癌(胆嚢癌、胆管癌、乳頭部癌)における検討を行った。切除標本のformarin固定paraffin包埋切片を用いて作成した各々の組織マイクロアレイ(TMA)を用いて、免疫組織化学的にAQP-1発現を評価し、各々の年齢・性別・腫瘍径・腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)・TNM分類・術前黄疸との関連を解析した。AQP-1発現が、胆道癌における予後予測、悪性度予測因子として有用である可能性が示唆された。また、黄疸遷延症例が有意にAQP-1発現が低下していた。 胆道癌の5年生存率は,乳頭部癌69.6%,遠位胆管癌44.2%であり、CEA(≧3.4),深達度(T3,T4),リンパ節転移(+),術前黄疸(T-Bil>2.5) は予後不良因子であった(p=0.071, 0.024, 0.001, 0.003)。 多変量解析では,CEA,術前黄疸が独立予後規定因子であった(p=0.019, 0.011)。AQP-1に加えて、悪性度や浸潤性発育に関連があると言われている膜結合型ムチンであるMUC-1発現を併せて検また、討した。胆道癌におけるAQP-1 positive/MUC1 negative症例は、有意な予後規定因子であった。膵頭部領域癌において、PTEN発現が化学療法感受性や予後予測に有用である可能性が示唆された。癌抑制遺伝子の一つとも考えられるPTENの異常により、アポトーシスを抑制し、抗癌剤感受性を低下させている可能性がある。AQP-1とこれら遺伝子との相互関係は今後も引き続き検討が必要ではあるが、胆道癌における予後予測、化学療法感受性および悪性度予測因子として有用である可能性が示唆された。
|