本研究では、レトロウイルス挿入変異によって同定された、癌に関わる遺伝子候補の中から、タンパク質をコードしないnon-coding RNAに着目し、それらの癌における役割を明らかにすることを目的とした。本年度は、着目したnon-coding RNAが、どのようにして癌に関わるのか、その分子メカニズムを明らかにすることを試みた。 着目した候補non-coding RNAのうち、14番染色体のnon-coding RNAが連なっている領域(14q32.2)に存在する複数のnon-coding RNAが、上皮間葉転換(EMT)(癌の悪性化機構の1つとして考えられている)に関わる可能性を、申請者は見い出した。TGFbeta依存的にEMTが引き起こされるモデル細胞において、14q32.2に存在するいくつかのnon-coding RNAは、TGFbeta依存的に発現が上昇する。さらに、14q32.2に存在するnon-coding RNAの発現を抑制すると、EMTが阻害される。以上より、14q32.2に存在するnon-coding RNAのうち、いくつかはEMTを阻害することにより、EMTに関わる可能性が示唆された。今後、相互作用するタンパク質との関係性を明らかにすることにより、これらのnon-coding RNAのEMTにおける役割を明らかにする。 また去年から着目している2つの候補non-coding RNA、急性前骨髄球性白血病での関与が推測されているNEAT1、X染色体の不活性化に関わるJPXの、乳癌の悪性化における役割も引き続き明らかにしていく予定である。
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