・便秘は小児から高齢者まで多くの人が抱える一般的な障害であるが,時として深刻な腸疾患を発症する原因ともなる.特に、介護を必要とする高齢者の便秘は、当事者だけでなく介護者にも大きな負担となっている。したがって,排便の適切な治療やケアが必要であり、そのためには貯留便の評価が最も重要となる.しかし、腹部触診や問診ではその区別は困難であり、適切なケアを提供できていない現状がある。そこで、申請者は利便性と安全性を兼ね揃えた超音波検査装置(エコー)を用いて大腸を可視化することでこの問題の解決を目指した。本研究では、便秘患者を対象とした排便ケアにおいて、エコーを用いた適切な排便ケア方法の確立を目的とした。 ・調査方法:エコー検査で大腸内容物を評価し、排便ケアにおけるエコー検査の有効性を検証するためには、前向き観察研究を実施した。 ・対象者:排便困難でRomeⅢによる機能性便秘と判断し排便ケア実施が決まった患者とした。 ・調査手順:問診(既往歴、排便の頻度、排便時の困難感と下痢症状の有無、および排便方法)及び排便状態(King's stool chart)と大腸のエコー画像を比較検討している。エコーは排便ケア実施の前日から便秘が改善するまで1日1回実施した(入院期間中:最大14日を限度とした)。 ・結果:便貯留と大腸ガスの区別は可能で、便秘に対しては直腸性便秘又は結腸性便秘に区別が可能であった。さらには、貯留した便の硬さと貯留部位が確認できた。よって、排便困難な患者にエコーを行うことで、適切な排便ケア(下剤、浣腸、摘便、坐薬)、便秘日数の短縮、薬剤の減少による排便を行うことが可能ではないかと考える。
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