研究課題
緑内障の病態として網膜神経節細胞の軸索変性および細胞死が知られている。これまで緑内障の進行状況や程度、薬剤による進行抑制効果は組織切片や電子顕微鏡を利用して、どの程度細胞死が誘導されているかを基準に評価されてきた。しかし、最近では、軸索障害が細胞死の前段階に関与していると考えられるようになってきた。そこで申請者は、細胞死に至るまでに軸索流の停滞が起こると考え、単離した網膜神経節細胞の軸索輸送を可視化し、緑内障の進行に関与する種々のストレスを負荷することで、軸索輸送機能が受ける影響を動的に検証した。緑内障では硝子体中にTNFαやIL-6が上昇することが報告されていたため、それらのサイトカインが濃度依存的に網膜神経節細胞の軸索の断片化や細胞体の消失を誘導するのか検討した。いずれの場合も高濃度の添加では軸索の断片化や細胞体の消失を確認することができたが、濃度依存性は見られず、断片化や細胞体の消失が誘導されるまでの時間に規則性がなかった。次に過酸化水素やTBHP、膜電位を消失させる脱共役剤であるCCCP、ATP合成阻害剤であるオリゴマイシンを使用し、酸化ストレスやミトコンドリア障害が軸索輸送に与える影響を検討した。しかし、これらの場合もサイトカインと同様の結果となった。これらのことから、サイトカインや酸化ストレスは網膜神経節細胞の軸索の断片化や細胞体の消失を誘導するものの、添加する濃度とそれらの誘導効果に相関がなかった。つまり、全ての網膜神経節細胞がストレスの程度に応じて同じ反応を示すのではなく、細胞ごとにストレスに対する閾値が異なっているのではないかと考えている。現在、レーザーマイクロダイセクションを用いた軸索切断モデル、軸索輸送に不可欠な微小管の解離を促進するコルヒチンによる軸索輸送障害モデルを用いて、ストレスが軸索輸送に与える影響を検討している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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